やさしさはシタゴコロ【黄】

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美幸「じゃあね、Aちゃん。今日は付き合ってくれてありがとう」


「こちらこそ！！！最後の最後までご馳走になってしまって…ありがとうございました。すごく楽しかったです！」


亮「美幸さん、気をつけて。またお願いします」


美幸「おう！錦戸、また現場で。Aちゃん、錦戸のこと頼んだよ〜」




2軒目のお店を出たあと、3軒目に立ち寄った近くのバーで一杯だけ飲んで、解散する流れになった。先にタクシーを拾って、美幸さんをお見送りする。タクシーが見えなくなるまで目で後を追っていると、背中が急に重たくなった。




「亮さん？」


亮「あー、結構飲んだなぁ」


「大丈夫ですか？って！目瞑っちゃだめ！わたし抱えて帰れないですって！！！」


亮「んんん〜」


「ちょっあ！タクシー！！、」




重みで前屈みになる私に御構い無しで体重を預けてくる。肩口あたりに亮さんの頭があって、ぐりぐりと押し付けられる。鼻を微かにかすめるお酒と、タバコの匂い。


そのままの体制で目を閉じるもんだから、目の前に来たタクシーを慌てて捕まえた。半ば引きずるようにタクシー近づき、自分ごとなだれ込むようにタクシーに乗り込み、なんとか亮さんをシートに座らせることに成功した。




「あ、待ってください。私は乗ってかないので…亮さん、お家の場所ちゃんと運転手さんに言ってくださいよ？」


亮「んー、無理。寝る。はい、任したぁ…」


「ええっ！？///おっおーい！！！」




ごそごそと財布だけ取り出してこちらに手渡すと、そのまま隣に座るわたしの肩にもたれかかるようにして、本格的に寝始めてしまった。ほっぺたをペチペチ叩くけど、鬱陶しそうに眉間にシワを寄せるだけで、目を開ける気配はない。


急かすような運転手さんの咳払いで、とりあえずタクシーを亮さんの家の方向に走らせてもらうことにした。家まで送って、そのままタクシーで帰ろう。


ほんと、いつもと違くて、調子狂うなぁ…
仲のいい、大好きな先輩に対して、異性としての意識が芽生えそう。亮さんにとっては、私にだけ特別って訳じゃないのに。気に入った女の子に対しての距離の近さも、スキンシップも、目の前で見てきたから知っている。


その対象が自分になったと錯覚するのは、だめだ。
子犬のような寝顔で、スヤスヤと気持ちよさそうな亮さんを見て、思わずため息が溢れた。

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