君に贈る言葉 ページ33
リンク「……………………いかないで………」
消え入るような、絞り出すような、君の声が耳に届いた。
立てない私に合わせるように、正座をする形で座っている君の、膝に重ねられた手を見つめる。
まるで、何かと戦っている時のように固く握られたその拳を。
そっと手を重ねると、君はハッとして私に目を向けた。
涙が私たちの手の上に落ちた。
君の涙だった。
『リンク…ありがとう』
思っていた以上に声が出なくて少し笑いそうになってしまった。
『なんか、やっと、勇者っていうものを背負ってない本当のリンクの声を聞けた気がする』
重ねた手を、在りし日のように、どちらともなく絡めて、私はリンクの顔から目を離さない。
『嬉しい、リンク。大好き』
俺だって…とリンクは、少し身を乗り出して訴える。涙を我慢することを諦めたようだった。
そう、君は、もう我慢しなくていいんだよ。
年相応に、君は笑って、泣いて、怒っていいんだよ。
もう。もう、全部終わったんだから。
ガクンと力が入らなくなってきて、私はリンクの胸に向かって倒れた。
体勢を自分で直すことはもうできないし、何より今は少しでも君に触れたいと思ったから、そのまま、空いているほうの手を背中に回して、ぎゅうっと君に抱きついた。
君の鼻をすする音が、すぐ隣から聞こえてくる。
『君の初めてのワガママを、叶えてあげられない、不甲斐ない妖精で、ごめんね…』
リンク「…そんな、こと……っ」
『だけどね、ずっと、私、自慢だったんだ…』
リンクは突然出てきたそのワードに理解が追いついていないらしかった。僅かに身動ぎをして、それから私と同じように、そっと背中に手を回してくれた。
私の言葉を待っていてくれてる。
そんなにのんびりと、話してる場合じゃない。
息を大きく吸い込んで、言葉を選んでいく。
『君がナビちゃんに会うよりも、ゼルダに会うよりも、誰に会うよりも先に、ずっとずっと先に、君という存在を見つけてたんだよ、私』
私は、君の、勇者の道具の管理を司る妖精。
君がこの世に生まれ落ちたその時から、私は君を知っていた。
こんなこと言ったら、ナビちゃんやゼルダと張り合ってるみたいで、なんだかかっこ悪いけど。
『私しか知らないリンクがいるんだって』
それが少し優越感を感じさせてた。
簡単には巡り会えない私たちだけど、きっと私はこの世界の誰よりも君をずっと見ている。
そして、それは。
『これからも、変わらないよ、リンク』
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レイン(プロフ) - 最ッッッッッッッッッッッ高です!!ほんとに!今部屋走り回ってきました!そんぐらい好きです!ああもうリンク尊い…(遺言) (2019年7月14日 20時) (レス) id: f0b4214c85 (このIDを非表示/違反報告)
三村(プロフ) - ((MOE.moena))さん» ありがとうございます!あまり挑戦しないエンドだったので心配だったのですが、そう言っていただけると本当に書いてよかったと思えます!!最後までありがとうございました!! (2018年3月14日 18時) (レス) id: 25fb77a1be (このIDを非表示/違反報告)
((MOE.moena))(プロフ) - 最高でした!!! (2018年3月8日 0時) (レス) id: 11d29a6d34 (このIDを非表示/違反報告)
三村(プロフ) - mayaさん» コメントありがとうございます!心に響く話が書けていたようで何よりです…!もう少しで完結です。と言っても、更新が不定期でご迷惑おかけするかもしれませんが…最後までよろしくお願いします!! (2018年2月26日 23時) (レス) id: 25fb77a1be (このIDを非表示/違反報告)
maya(プロフ) - なんですかこの作品わぁ……泣いちゃいましたよ!!?もうリンクのいかないでみたとき号泣しましたよぉぉ……もう少しで完結ですかね…?更新頑張ってください…(泣) (2018年2月20日 15時) (レス) id: 4668a7dd1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三村 | 作成日時:2016年4月23日 19時