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「でも森を抜けないとでしょう。夜はどうする予定なの」
「ええと……」
心底心配そうな優しさと鋭さを併せ持った母親の声に、バラムとクロは参ってしまった。思わず二人で目を合わせてしまう。
最初の予定では、もうすでに森に入って数刻後には抜け出ていたはずだった。そうでなくとも森の入り口くらいには差し掛かっていた。
バラムは押し黙るクロの代わりに母親に向き合う。
「できればどこかで一泊できればよかったんですけど、今からだと森で野宿になりそうですね……」
「そう……」
正直に話せば、母親は眉間の皺を深く刻み、何かを考えているようだった。
クロの背中に嫌な汗が伝う。
明らかに力のない子供二人が、ある程度整備されているとはいえ森に入ろうとしているのだ。普通の人間の感覚であれば警察に連絡するなり、保護者に連絡を入れるなりを促すだろう。
しかし、今それをされると、クロはアドラメレクから逃げられなくなってしまう可能性が高い。普通の警察に保護されたところで、強大な力を持つアドラメレクには太刀打ちできない。
(これ以上追及しないで……、見逃して……！)
クロとバラムはひたすら祈るしかなかった。
「二人とも、」
そんな二人の前に、女性が紙を差し出した。
きょとんと呆けながら二人は紙を受け取る。
「これ、持っていきなさい」
「これは？」
「魔獣を狩るときに使ってた小屋の地図。いくつかは残ってるはずだよ」
「え？！」
バラムが大きな声を上げると、女性は笑った。
「昔使ってた地図で悪いね。今はもう開発が進んで魔獣狩りなんてこの辺じゃしないから、手入れも最低限だろうし設備はまぁ古いけど、使えないこともないでしょう。よければ使いなさい」
優しい心遣いだった。子供が安全に夜を過ごせるように、森で迷わないように示してくれる最上限の贈り物をもらったのだ。
これならばクロが居たとしても、ある程度は安全に森で過ごすことができる。
「あ、ありがとうございます！」
「いいや、こちらこそ。二人で仲良く気をつけて行くんだよ」
深く頭を下げて礼を述べると、女性は慈悲深い微笑みを湛えて二人の頭を優しく撫でた。
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ほるすたいんねこ(プロフ) - 海姫さん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけているようでとても嬉しいです！！ゆっくりの更新ではありますが、お付き合いくださいませ。よろしくお願いします！！ (2023年3月12日 11時) (
レス) id: 4b2c935aae (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - めちゃくちゃ好みのお話です。表現方法も綺麗で楽しく読んでます。更新楽しみにしていますので、これからも頑張ってください！ (2023年3月6日 0時) (レス) id: d925a11138 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほるすたいん猫。 | 作成日時：2023年3月6日 0時
