【スモーカー】風に舞う煙 (ページ4)

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「乾杯」

「……おす」

カチン、とグラスが鳴る。
結局酒に釣られて来てしまった自分を呪いたい。

食堂から持ってきたつまみをテーブルに並べて
向かい合って酒を飲む。

さっきまで私の頭の中を占領していた渦中の人と。

「…お前、何で海兵になった？」

「他に仕事が無かったから」

「あ？」

「…悪いけど、海兵が皆ヒーローになりたいと
　思ってる訳じゃねーんだよ。
　そこらへんの雑魚海賊捕まえて、
　たまにサボって、住み込みで給料貰えりゃそれで良い。
　そういう海兵もいるの。私みたいに」

「お前を見てるとそうは見えんがな…」

「アンタに何が分かるんだよ？
　テメーの理想を勝手に押し付けんじゃねぇ」

「ハハハ。本当に可愛くねぇなぁ…」

悪態つけばつくほど
相手にされてない感じがして余計ムカつく。

「可愛くなくて結構。
　元々女を武器に海兵やってないんで」

「そりゃ良い心意気だ」

「……フン」

グラスに氷を足して、ウィスキーを注いで
指で掻き回す…その仕草から目が離せない。

氷がグルグルとグラスの中で回る。

「……(指、太い。手もでかい)」

「マリンフォードで何を見た？」

「…え？」

　
やばい、ボーっとしてた。

「頂上戦争に…お前も居たそうだな。
　その後自ら志願してこのG-5に来ている。
　俺と同じだ。どういう訳だ？」

「……別に」

「お前の戦闘力とその機転、要領の良さで
　本当だったら大佐にもなれてるはずだ」

「…言っただろ。素行が悪いの」

「わざとそうしてるようにしか…思えねぇ。
　何か心に闇みたいなものを感じるな……」

「……っ！」

何でそんなこと分かる？

適当に仕事サボって、時々雑魚捕まえて
それなりの海兵やってるだけなのに。

「なぁ、スモやん…正義って何か分かるか」

「あ？」

海軍が背負う"正義"は何なのか。

私は分からなくなってしまったんだ。

あの頂上戦争で。