【ルッチ】兎と豹【ワンピース】 (ページ46)

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「……っパウリー、さん…」

「………？」

何か、いつの間にかそういう雰囲気になっていて
「しまった」と思ったときにはもう遅く
パウリーは俺の肩に手を置いた。

これ、キスする流れだよなって
瞬間的に気が付いたけど

俺は、パウリーの胸元を押した。

「？？？」

「…っごめんなさい！」

中身は男だからか、
はたまたパウリーのことを好きになれないのか
あるいは覚悟が足りなかったのか。

俺は、拒んでしまった。

「…いや、俺こそ悪い」

「何か…心の準備が…その…」

思えば今まで、恋愛ってしたことがなかった。

彼女と呼べるような女は何人かいたけど
任務と訓練の間の気分転換みたいなもので
"好き"って感情がよく分からない。

苦労して口説いた酒場のマリアだって
"好き"だったかと言われると疑問が残る。

ましてや今回は、相手が男。

この特殊な状況に対応出来るほど
俺は器用じゃなかった。

「あー…そろそろ寝るか！
　俺はソファで寝るからAはベット使えよ」

「うん…」

気まずい雰囲気を払拭する為に
パウリーが明るく言った。

俺はどう振る舞えば良いのか分からず、
すくっと立ち上がった。

その手をパウリーが取る。

「…っなぁ、A」

「…は、はい」

「お前もしかしてまだ…未練があるのか？」

「え…」

「この手首の傷の男だよ」

大分治りかけていたが、まだうっすらと
残ったロープの跡をパウリーがなぞった。

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