【ルッチ】兎と豹【ワンピース】 (ページ23)

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翌朝。

「おーす。おはよー」

「あ、職長、おはよーございます。
　昨晩はご馳走様でした」

パウリーは無精髭をそのままに
葉巻を吸って、腹を掻きながら出勤した。

昨日ルッチに言われた言葉がこだまする。

「あの！」

「ん、何だ？」

「また連れて行って下さいね、あの店」

なんて言ってみたりして…。

「んん、お、おう…わ、分かった」

おお、分かりやすく動揺している…

もういっちょキメるか？

「あ、でも。皆には秘密ですよ？」

「！！」

悪戯に微笑んで、耳打ちしたりして。

俺も男だ。

気持ちは分かるぜパウリーさん。

気になってる女にそんな事されたら
舞い上がっちまうよなぁ…

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「(職長、顔真っ赤だったなぁー…)」

良心が痛む。

俺たちはスパイだ。
正体を隠して潜入してる時点で
相手を騙してる訳だから
今更何言ってんだって感じなんだけど…

あのパウリーの顔…。

「ンマー、そんなんじゃすぐ解けちまうぞ」

「うお、アイスバーグさん！」

「ここに先に通してからこうして…」

アイスバーグは俺がまとめていた
木材のロープを解いてもう一度結び直した。

「よし、これで良いだろう」

「あ、ありがとうございます…」

ニコッと笑いながら
俺の肩にポンと手を置いた。

アイスバーグ。

少しでも接すればすぐに分かる。
この男、欠点がない。

船大工としての腕はもちろんだが
人望があるっつーのはこの人の事を言うんだと思う。

「仕事は楽しいか？」

「へ？あ、はい。めちゃくちゃ楽しいです」

「ンマー、そりゃ良かった。
　俺も楽しい。好きなことを仕事に出来るのは
　幸せなことだぞ」

「はい！私も、そう思います。本当に」

本当に、そう思う。

俺は、俺の"本業"を楽しめているだろうか。
人に誇れる仕事では無い。

政府の為だったら、暗殺だって、盗みだって
なんでもやって来たし、息するみたいに嘘をついてきた。

「ンマー…俺はこの仕事を誇りに思ってる」

アンタ達が羨ましい。

「良い会社に入れて本当、幸せです」

「そうか。そう言ってもらえて嬉しい。
　何かわからないことがあったら聞いてくれ」

「はい！」

俺もこういう生き方がしたかったのかもしれない。
　

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