《大型コラボ》十人十色のバレンタイン《歌い手》

＊ ページ29

「A、遅なってごめん。」


「…いいよ、大丈夫。そんなに待ってないし。」


「…A？なんかあった？」


「…別に。」



“センラがキスしてるところ見たから”なんて、言えるわけないじゃん。


そう思って口をつぐむ。


センラは心配そうにこっちを見てくる。


…そんな風に見ないでよ、優しくしないで。



「…なぁA…」


「よかったね。」


「はぁ？どうしたん急に。」


「神楽坂さんと、付き合うことになったんでしょ？よかったじゃん、あの子可愛いし。」


「え…ちょ、待って、なんで…。」


「見てたから。ごめんね、覗こうと思ってたわけじゃなかったんだけど…。」



私がそう言うとセンラは暗い顔をして黙った。


…なんで、どうしてそんな顔をするの？



「…付き合ってないで。」


「……え？」


「だから！神楽坂さんとは、付き合ってへん。断った。」


「で、でも…！キスしてたじゃん！」


「それも見てたんか…。ちゃうよ、断ったら神楽坂さんが勝手に。」


「そう、だったんだ…。」



じゃあ、まだ私にもチャンスはあるってこと？



「…なぁA、Aは俺にチョコ…くれへんの？」


「…へ、なに、急に。そんなにいっぱいあるんだから、私のなんて…」


「こんなん、いくら貰っても俺は嬉しない。俺が欲しいのは、本命からのだけやもん。」



…待って、それって…。



「俺…Aのこと好きやで。小さい頃からずっと。」


「…嘘…。」


「こんな嘘つかへんわ。」



センラが私のことを好き。


その事実があまりにも嬉しすぎて、思わずセンラに抱きついてしまう。



「え、ちょ、A？」


「…好き、私も好き。」


「え…ほんまに？」


「こんな嘘つかない！」



さっきのセンラと同じ返しをすると、センラからも抱きしめ返してくれる。


なんだ、私たちずっと両思いだったんじゃん。



「も〜…A俺に全然くれへんから眼中にないとおもっとったわ。」


「う…ごめん。」


「ま、でもええわ。今日からAは俺のやろ？」


「じゃ、今日からセンラは私のものだね。」



なんて言って、笑いあって。


この先もずっと、こんな風に一緒にいれたらいいな…。










*side_shima*



Aうまくいったよ。ありがとう。



Aからメールが来たと思って見たらそう書いてあって。


“よかったな”と思う反面残念にも思えてしまった。



「俺も本命が欲しかったなぁ…なんてな。」

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