【d!】ガラスの靴が割れた。 (ページ10)

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ウツ様とお出かけをした翌日。

いつも通りメイさんに一つの封筒を渡された。
…私も，受け取らなければいいのに。つくづく思う。
しかし，毎回添えられているメッセージカード。これがどうも気になるのだ。

『…？』

少し封筒が分厚い。気のせいかもしれないが，本当に少しぷっくりとしている。…何か入っているのかしら？

私は封を開ける。

『これは…？』

いつも通りの盗撮写真。…いつも通りというのも可笑しいのだけれど。

そして，それと共に一輪の花。この花は確か。カスミソウ，だったかしら。花言葉は…“幸せ”。
メッセージカードにはいつもとは少し違った内容が記されてあった。

“僕なら貴女を幸せにできる。”

いつも以上に簡潔な言葉。しかし，その言葉が私に深く刺さる。

“幸せに”…ね。私と直接会ったこともないのに良く言えることだわ。

実際，私は今の生活に不満を抱いているわけではない。困っていたのはウツ様との夜の営み。しかし，今はそれも改善された。これ以上に望むものなんて―。

『ない…のよね？』

誰も居ない部屋でポツリ呟く。

…うん。そうよ。
心優しい夫。毎日安定した美味しい食事。お金には困るどころか持て余している。メイドにも恵まれ…これ以上望むものなんてないじゃない！

あれから更に一週間。

今度は写真と花が共に毎日届けられた。本当に飽きないわね。流石に私のメンタルも削られる。折角ウツ様のお陰で改善してきていたのに。

『…そうだわ！』

私は机をダン！と叩く。

ゾムさんに会いに行きましょう。
心優しい彼ならきっと冷静に相談に乗ってくれるはず。

お家は知っているし…。

― zm「…きっと，また何処かで会えるから。」 ―

…きっと会えるわ。

私は城下町，そして城下町の抜け道を使ってゾムさんのお家へと向かった。