【d!】ガラスの靴が割れた。 (ページ9)

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ut「シンデレラちゃん！」

『ウツ様。』

私は再び城下町に戻ると，すぐにウツ様が声をかけてくださった。

『…申し訳ありません。ウツ様からいただいたお洋服を転び汚してしまいました。』

私は思い出し，深く頭を下げる。

ウツ様は慌てて「顔を上げて」と言う。私はゆっくりと顔を上げる。すると，ウツ様は心優しい瞳をしていた。

ut「んなん気にせんといて。こうなることを予想してなかったんは俺が悪い。ぜーんぶ俺の責任やけん。」

…やはり，ウツ様はこういう方なのね。
全部包みこんでくれるような，優しい方。

ut「…よーし！」

ウツ様が大きく伸びをする。その様子はネコのようで愛らしく感じてしまう。

ut「んな，お出かけ再開しよか。」

ウツ様が手を差し出す。
その姿はあの舞踏会のときと変わらない。寧ろカッコいい…なんて，私は何を考えているの。

『…ええ！』

私はその手を取る。

それから私達は城下町を見て回った。時々店中に入ってみたり，子供達とお話してみたり…。

そして，今はウツ様と夕食を共に食しているところ。
珍しい外食で少し身構えてしまう。

ut「…そんな緊張せんといて。リラックスリラックス。」

私の心を見透かしたようにウツ様は口を開いた。
本当に，この方には隠しごとができない。

『…その，本日はありがとうございました。
私自身とても楽しかったです。このような素晴らしい物もいただいてしまいましたし。』

私は自分の鎖骨らへんをチラッと見て言う。
そこに光るのはサファイアが輝く美しいネックレス。
城下町のジュエリーショップでウツ様がプレゼントしてくださった物だ。

ut「いーの。いつも俺が迷惑かけちゃってるわけだし。
…本当にいつもありがとね。シンデレラちゃんと居ると，毎日が楽しいんだ。」

そう言う目の前の方は，“王子様”ではなく“ウツ様”であった。…お世辞かもしれない。でも，私はその言葉がとてつもなく嬉しかった。

『…私も，ウツ様と居ると楽しいです。』

これは私の本心。

ut「！…ホンマ？そうなら，嬉しいなぁ。」

ものすごく嬉しそうにするウツ様。それはそれは，見ている此方が照れてしまうほどだった。

ut「…帰ろか！」

『ええ。』

私は再びウツ様の手を取る。

…ストーカーはもちろん怖い。
でも，ウツ様なら私を守ってくださるのかも…なんて。