【d!】ガラスの靴が割れた。 (ページ13)

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エピローグページ13

ut 視点

今日もいつも通り起き，いつも通り職務に向かう。いつも通りでは無くなったことといえば，愛する人が居ないことだ。

「ウツ様。」

職務を終えた頃。メイちゃんに声をかけられる。その時，メイちゃんが紅茶を淹れていてくれたことに気がつく。

「ごめんね。最近ぼーっとしてて…。」

「お気になさらず。…愛する人を失う悲しみは，胸が苦しくなるほど分かりますから。」

メイちゃんはそう言って，自らの首に下げられたロケットペンダントを手で優しく包む。…きっと，メイちゃんの愛している人の写真を入れてあるのだろう。

「私としても胸が痛いばかりです。シンデレラ様は…お優しい方で，私にも優しく…っ…。」

「メイちゃん…。」

…そうよな。メイちゃんやって苦しいんや。愛していた，仕えていた主人が居らんくなって。
俺はメイちゃんの頭をそっと撫でる。

「ウツ，様…。」

「…メイちゃんは，笑っとったほうがかわええよ。」

…そうや。俺は一人やない。
それに，確実に消えてしまったというわけでもない。きっと，戻ってきてくれるさ。俺は，その時までメイちゃんと待ち続けるだけや。

＊＊＊

メイ視点

ふふ…本っ当にシンデレラ様が消えてくれてよかった♡

急にフードの怪しい男に話しかけられたときは心臓が止まりそうになったけど…。でも，そのお陰で今こうしてウツ様に仕えられているわけだし。

― ???「俺と手を組まへんか？」 ―

…そのとき私は覚悟を決めたの。この男と協力して，2人の仲を引き裂いてやろうって。

そして，私はシンデレラ様に盗撮写真が入っている封筒を毎日渡すことにした。それをあの男に話すと，すぐ乗り気になり手を貸してくれた。二人がかりの盗撮。それはもちろん数え切れないほどになるわけだ。

ま，ウツ様に相談するのは想定外だったけど…もう関係ないしいいよね！

「ウツ様。」

ut「メイちゃん…どした？」

瞬きで動く瞳。儚げだが優しさに溢れたお顔。全てが麗しい。

「ウツ様には私が居ます。どうかお気に病まないでください。」

ut「…ありがとーな。」

少し照れくさそうに笑うウツ様は酷く愛らしい。

…あぁ，本当に邪魔者が消えてよかった♡

これは，もうお姫様ではないA。そして，その座を奪おうとするメイ。

しかし…何方にもガラスの靴はない。そんな…馬鹿げた御伽話だ。