【d!】ガラスの靴が割れた。 (ページ11)

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私は走る足を止める。そう，ゾムさんの家に着いたのだ。

…迷惑，かしら。そもそも姫という立場で昼間，お城を抜け出してこのようなところに来るのも変な話だわ。

…もういいわ！来てしまったものはしょうがない。
私は美しい純白の扉をノックする。

『…シンデレラよ。ゾムさん，いらっしゃる？』

暫く待っていると，扉が開いた。
そこに居たのは，フードを被っておらず美しい瞳を見せるゾムさんだった。

zm「シンデレラ。どしたん？わざわざ来て。」

それはもう不思議そうに聞いてくるゾムさん。まぁ，それが普通の反応よね。

『少し相談したいことがあって。ウツ様には話しにくい内容なの。それに私，あまりお友達居ないし…。
だから，ゾムさんなら相談乗ってくれるかな，って。』

今更考えると，なんて迷惑な話だろう。
一回話しただけの女が相談をしに家を押し寄せて来るだなんて。

zm「…俺なんかでええんやったら。ほら，中入り。」

しかし，私の想像とは裏腹にゾムさんは笑顔で暖かく迎えてくれた。…これだ。ゾムさん特有の暖かさ。
とても安心して，ずっと此処に居たい…そう我儘を言いたくなるような。

zm「…そんなことが。シンデレラも大変やな。べっぴんさんやからこんな面倒事に…。あ，はい。お茶。」

『ありがとう。べっぴんって程ではないけれどね。
でも，本当に困っているの。特に…これ。』

私は一瞬照れたが，紅茶を一杯飲み，すぐに真剣な顔に戻す。そして，あのカスミソウと添えられたメッセージカードをゾムさんに見せた。

zm「…“僕だったらあなたを幸せに”…うわぁ，悪質。
シンデレラの幸せなんて本人にしか分からへんのにな。」

ゾムさんは私の全てに共感してくれる。それがやはり心地よくて…なんて，今はそんなこと考えている場合じゃない。

『本当よ。私はもう十分幸せなのに…。』

zm「…やっぱ，ウツっていい奴なん？」

ゾムさんがふと聞いてきた。そう…そうね。

『…ええ。ものすごく優しい方よ。』

…それに間違いはない。ウツ様のことを考えているせいか，頭がふわふわしてくる。

zm「…そんな言われるなんて，ウツって奴は幸せもんやな。」

『そう，かしら…。』

…？舌がうまく回らない。

zm「まぁ…

そのAはもう俺のもんやけど！」

え…？

私はその言葉を聞いた後，その場に倒れ込んだ。