16、逢引 ページ16
午後の講義が終わり、食堂で雑談に興じていたら後方からヒールの靴音が聞こえた。
振り返れば、白峯がいた。
しん、と水を打ったように食堂が静まり返る。
長い黒髪は綺麗に編み込まれ、小さな唇には口紅が、頬には薄く頬紅が乗っている。普段、化粧気がない彼女が化粧を薄くしただけで、印象が大きく違う。
黒いワンピースはウエストが絞られていて、彼女の細い腰が強調され、膨らんだ袖口が可愛らしい。首にはチョーカーが巻かれ、トップに精緻な星の銀細工があしらわれている。
細い首筋に巻かれた黒が、妙に艶かしい。
彼女は唖然としている八人に近づき、
「デート、行くのでしょう？ 」
と、首を傾げた。
ハイヒールのせいで、いつもより目線が上になり新鮮な感じがした。
「白峯ちゃん、本当に可愛いね。眼鏡も良いけど、こっちの方がもっと可愛いよ」
神永が「可愛い」と連呼する。
「さて、じゃあ行きますか」
三好が立ち上がり、八人と白峯が揃って食堂を出た。
「何で誘いに乗ったんです？ 」
「何となく」
彼女が素っ気なく答える。
「白峯ちゃんは、どこか行きたい所はある？ 」
「・・・よくわからないから、貴方たちが決めて」
「もしかして、デートとか初めて？」
「・・・」
彼女が黙り込む。
「嘘、マジで⁈ やった、俺、白峯ちゃんの初めて貰っちゃった！ 」
沈黙を答えと受け取った神永が騒ぎ出す。
「失礼だぞ神永」
「神永が言うと語弊があるね」
比較的常識にある、田崎と甘利が言った。
三好がちらりと白峯を横目で見た。彼女は目を伏せたまま、相変わらず無表情だった。だが、今朝や昼間の時のような不機嫌さは感じられない。
通り過ぎる店のガラスには、薄く笑う三好の顔が写っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
枇杷島(プロフ) - 凄く嬉しいです。楽しい作品に出来ているようで安心しました。お褒めのお言葉、ありがとうございます！ (2016年9月29日 23時) (
レス) id: 841cd86dfc (このIDを非表示/違反報告)
野崎 - 何度見ても面白いし表現が色っぽくてすごいなあと思いながら見てます！更新楽しみにして待ってます。頑張ってください！ (2016年9月29日 23時) (レス) id: a382114b2a (このIDを非表示/違反報告)
枇杷島(プロフ) - レンさん» ありがとうございます！ 私も誰落ちとかは兎も角、死人は出したくないなって。ご意見、ありがとうございました。 (2016年8月23日 0時) (レス) id: 841cd86dfc (このIDを非表示/違反報告)
レン - 三好オチかどうかは別として生きててほしいです。 (2016年8月23日 0時) (レス) id: 6d1b932390 (このIDを非表示/違反報告)
枇杷島(プロフ) - ありがとうございます！私も悲しい話は苦手なので、生きてる方が良いなと考えてます。 (2016年8月20日 10時) (レス) id: 841cd86dfc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：枇杷島 | 作成日時：2016年8月16日 0時
