10 あの日 5 ページ10
ジニョンside
となるはずだったのに…
コツコツ…
コツ…
コツコツ…
僕は音が響く方向を見た…
不規則な靴音をたて…
階段をフラフラしながら…
若い女性が降りてくる…
足元がおぼつかない…
あぁ…
危なっかしいな…
この人もきっと酔ってるに違いない…
白い開襟シャツに…
黒い長パンツに黒のピンヒール…
長いサラサラとした黒髪は…
後ろでしっかりとひとつに束ねられていて…
耳には…
高そうな宝石が埋め込まれた変わったデザインのビアス…
スマホを持った左手薬指には…
同じく高そうな宝石が埋め込まれたリング…
黒い大きい鞄を右肩にかけ…
左手でスマホを持ってうつむき加減に誰かと話しながらこっちに向かって歩いてきている…
デキる人って感じだな…
チラチラと見ている間にも…
そのひとはヨロヨロしながらこちらに向かって歩き続けている…
そしてついに僕の前を…
通り過ぎ…
た…
ふわっと香る女の人の匂い…
嫌いじゃない…
あれ？
でも…
おかしい…
酒の匂いなんか…
これっぼっちもしていないじゃないか！
じゃあどうしてフラフラしてるんだ？
気分が悪いのか？
声をかけたほうがいいのか？
勇気がない僕は…
そう思うだけで言葉にすることが出来ない…
そうこう考えているうちに…
そのひとは…
僕を通り過ぎてすぐに立ち止まった…
ん？
どうしたんだ？
そして…
いきなり振り向き僕の方を見た…
あっ！！
さっきまで下を向いていたからよく分からなかったが…
そのひとは真っ赤な顔をして…
ポロポロと大粒の涙をこぼしながら…
唇を噛みしめながら泣いてた…
何かを訴えるかのような…
悲しげな瞳…
でも…
こんなリアルに…
こんなシチュエーションで目が合ったことなんて生まれてはじめてだったから…
よく分からない位に心臓がバクバクして…
だから…
この場をどうやって切り抜けようって事しか考えられなくなって…
結局…
勇気のない情けない僕は…
そのひとから目線を外した…
しばらくすると…
その人は何事もなかったかのようにまた歩き出し…
僕を遠巻きに…
ゆっくり…ゆーっくりと旋回して…
結構な時間をかけ…
さっききた方向へと戻っていった…
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作者名：じぇびにゃん(*´ω｀*) | 作成日時：2016年9月19日 17時
