私の王子様じゃない！

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小さな駐車場に停めてある車



『失礼します、』



つい声が小さくなっちゃう
こんな密室で男の人と2人きりなんて初めてだから



SC「寒くない？」

『寒い』

SC「だよな」



大丈夫ですって言えばいいんだけど
やっぱり可愛くない態度で返しちゃう
なのに店長さんは気にしない様子でエアコンをいじって
すぐに車内が温まるようにしてくれる



SC「聞き忘れてたんだけど」

『はい』

SC「彼氏いないよな？」



また、ピリピリと電流が流れ始める
まだ出発しない車内で流れる空気



『い、たらどうするんですか』

SC「車で2人きりはやばいな」

『…いなくてもヤバいです』



私は子供だからこの人の言っている言葉の中にある
"本当の意味"が少しもわからない

さっきだって私の理想の答えは「嫉妬」なのに
私のほしい答えをくれない

やっぱり大人にとって私はカモで
またお店に来たくなるように色々言うんだ



SC「今まで彼氏は？」

『なんでそんなこと言わなきゃいけないんですかっ』

SC「ないんだ？」

『ある！』

SC「へぇ」



ずっとニコニコだったこの人からは
想像もできないくらいの無表情になった
少しして、やっとシートベルトをしだした



SC「キスはうまかった？」

『なっ、！！！』

SC「どうだった？」



ハンドルに体を預けてこちらを見る
その目は今までと少し違う



SC「そいつらは王子様だった？」

『……教えない』

SC「だめ、教えて」



私の頬に手が伸びて触れる
耳を撫でながら低くて甘い声で惑わす



『…なん、で』

SC「知りたいから」

『っまだ会ったばっかりなのに、なんでこんなに…』

SC「なんでだろう？」

『私が聞いてるの、』

SC「何でもいいじゃん」

『よくな、』

SC「何でもいいから、キスしよ」



近づく唇を私は避けられない
魔法にかかったみたいに、動けない

そっか、この人は王子様じゃなくて魔法使い



ちゅ…っ



柔らかくて少ししっとりした唇を重ねられた



『ん……ぁ、』

SC「ソラ…」



ちゅ、ちゅ…
繰り返される柔らかな感覚



SC「可愛い」



頭がパンクしそう

一度離れてもすぐに重なり合う
離れる時間はほんの一瞬でまるで離れたくないみたいに
すぐに重なり合って吐息が溢れる

きっとこの人は知らない
私が男の人と車で2人きりになることも
こんな風に深く男の人とキスをすることも
全部初めてだってこと



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