私の王子様じゃない！

#012 ページ12

.


『最悪、最低』

SC「ごめんって」



車が動き出して少しするまでボーッとしてた
気絶してたんじゃない？ってくらい
気付いたら車は進んでた



『え、どこ向かってるの？』

SC「俺の家」

『なっ、誘拐です！！』



いつのまにかしていたシートベルト
自分でした記憶ないからきっとこの人がしたんだ
全部上手でズルい



『行かないですっ』

SC「どうして？」

『その質問がどうして？』



時々会話が通じない時があるな…



『全然王子様じゃないもん』



でもキスは気持ちよかったな
溺れるんじゃないかって怖いくらい…



SC「嬉しそうだったじゃん」

『……酔ってたの』

SC「ソラ、」



またキスをする時みたいな低い声で私の名前を呼ぶ



『な、に…』

SC「俺がさっきキスしながら言ったこと覚えてる？」

『……覚えてない。でも言わなくていいっ、』

SC「俺と付き合お」



嘘だよ全部覚えてる
この人の香りと声と体温だけ覚えてる
言わないで、私が私じゃなくなる
私は絶対に王子様と出会って幸せに…



『無理！』

SC「少しは考えてよ」

『だって私のこと顔が気に入っただけでしょ』



それにあとはしたいことできれば良いんでしょ



SC「俺セ ックスがしたくて言った訳じゃないよ」

『っ〜だから、なんでそんなストレートにっ』

SC「じゃあジュンと付き合いたいの？」

『うん』

SC「どこが好きなの」

『顔』

SC「俺と一緒じゃねーか」



さっきまでの真剣な空気とは打って変わって
今度はケラケラと楽しそうに笑う

　

SC「で、家どこ？」



結局家に送ってくれるらしい
優しいんだか、なんなんだか、わからない

ただ私の頭の中は店長さんでいっぱいだ



SC「連絡先教えて」

『やです』

SC「なんでー」

『なんか…やだ』



こんなに男の人と近くなったことがなかったから
なんて連絡したらいいかわからないし、
返事が来ないって落ち込みそうだし
なんか気持ちとか全部囚われてしまいそう



SC「もう会ってくれないの？」

『知らないっ』

SC「ははっ、よかった」

『だから知らないってば』

SC「またおいで」



もし、もしもこの人が私のことを好きだったら
何が何でも連絡先を知りたいって思うはず
無理に聞かないってことは、やっぱり私って…

ってもう考えたくないのに考えちゃう



SC「ジュンも待ってるよ」

『考えとく』



明日も行くとは言わなかった
振り回されてばかりで悔しかったから
少しくらい私に振り回されてほしい


.

#013→←#011

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す