稲荷崎マネは伝えたい

【見たものは】 ページ29

貴女side


最悪だ。


あーあ、何してんだろ私。


自分で喋りかけないでとか言ったのに喋りかけてもらえないのがこんなに辛いなんて。


治を拒絶して1週間。


治は喋りかけてくれない。




それもそうだよね、私が治にあんなひどいこと言ったんだもん…


初｢ねぇあなた、顔色悪いよ？｣


優｢大丈夫〜？｣


【平気平気！ちょっと寝不足なだけ】


北｢あなた、体調悪いんやったらちゃんと保健室でやすまな｣


【大丈夫です！心配ありがとうございます！】




こんなやり取りにも慣れてしまった。





しかし、そんな私の癒しになっているのが…


｢にゃあん｣


最近校舎裏によく来る子猫。


背中がおにぎりみたいな模様をしてるから、｢にぎ｣って呼んでる。


いつも放課後、部活が終わってから会いに行っている。


さ、部活も終わったし


今日も癒しを求めてれっつご〜



？｢…だから…｣



…誰かいる？


私は壁の影に隠れて耳を澄ませた。


由｢…治先輩、付き合って下さい！｣


聞こえてきたのは佐和田さんの声と、


よく聞く告白のフレーズ。


少しだけ顔を出すと、佐和田さんの目の前には顔を赤く染めた治がいた。





治も佐和田さんのことを…





気付けば温かい水が頬を伝っていた。


そのまま私はしゃがみこんで泣き出してしまった。





私、治のこと好きだったんだ


なのに…なのになんであんなひどいこと言っちゃっただろ


侑｢あれ、あなたどした元気ないん？｣


顔をあげると｢え、大丈夫なん？｣と必死に聞いてくる侑。


侑につたえようと、治達の方に視線を向ける


侑｢…あれ見てあなたはどう思ったん｣




【苦しかった】


侑｢それが恋っちゅうもんや。


あなたはサムのことが好きやったんやろ？

せやから、その気持ちをそのまんまサムにぶつけてやったらええ。


アイツはまだ＿
ううん、あなたの口で聞き。｣


そう言うと侑は治の方へ歩いていった。




治side


佐和田さんに呼び出されて校舎裏に来た。


佐｢あのっ、私治先輩の事が好きなんです！だから……治先輩、付き合って下さい！｣


その瞬間にフラッシュバックされたのは他の誰でもない、大事な人の記憶。


マリカが強くて、エプロンがよう似合って、俺の大好きなアイツ。








｢…ごめん。俺好きな人おんねん。｣

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