87話 ページ38
・
｢……なに、してるの？｣
小さな女の子は、可愛いクマのぬいぐるみを抱き抱えながら、目の前の`モノ`を見る。
｢｢……｣｣
目の前の何かは、ゆらりと少女の方へ視線を動かした。
何かは少女と目があうと、瞳をゆらゆらと輝かせた。
｢｢……｣｣
｢あなた……だあれ？｣
少女の問に、何かは答えない。
少女は不思議に思い、辺りを見回す。そして、あるモノに目を奪われた。
｢……ねぇ、``それ``なに？｣
少女は何かの後ろを指さす。そこには、赤い水溜りの上に寝転がる女の姿があった。
｢｢……｣｣
答えは帰ってこない。
｢……｣
少女は好奇心をくすぐられてしまったのか、水溜りの方へ一歩、また一歩と足を進める。
｢｢……｣｣
何かはそれを止めずに、ただただ少女を見ていた。
｢……あれ？｣
少女は水溜りに横たわる女を視界に入れると、何かに向かって言った。
｢ねぇ、なんでおかあさんは、こんなところでねてるの？｣
かぜひいちゃうよ？ と、少女は何かに顔を向ける。
｢｢……｣｣
答えは帰ってこない。
少女は女……基自分の母親へ手を伸ばす。そして、体を掴み左右に揺さぶる。
｢おきて、おかあさん。ここはベッドじゃないよ？｣
何度揺さぶっても、母親の起きる気配はない。
おかしく思った少女は、何かへ視線を向ける。
｢ねぇ、なんでおかあさんはおきないの？｣
おかしいよ。そう言ってまた母親へ視線を向ける。すると、ようやく何かが口を開いた。
｢｢疲れたんだとよ……お前の母親は｣｣
聞いたことも無い低い声に、少女は呆気にとられる。だが、呆気にとられた理由はもう1つあった。
｢(……おちつく)｣
この低い声を聞いていると、どこか落ち着く自分がいたからだ。
｢｢……来い｣｣
そう言って何かは少女に向かって己の手を差し出した。
｢……｣
少女は数秒、差し出された手を見つめた後、横たわる母親へ視線を動かす。
｢でも、おかあさんは？｣
｢｢後で迎えにいくさ……だから、掴め。俺の手を｣｣
少女はコクリと頷き、手を掴んだ。すると、何かはニヤリと笑って、少女を抱き抱えた。
｢｢おかえり……｣｣
その言葉を言われると同時に、少女の意識は遠のいていく。やがて、完全に意識は闇の中へ落ちてっ行った。
｢｢……｣｣
何かは眠ってしまった少女を抱きしめながら、小さな声で呟いた。
｢｢おかえり、俺の娘……｣｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 360人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「クロスオーバー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
トギリ(プロフ) - 風来坊さん» 風来坊様、ありがとうございます！！自分もずっとニヤニヤしてますw応援していただき、ありがとうございます！！ (2020年9月19日 16時) (
レス) id: 735f3d0df8 (このIDを非表示/違反報告)
風来坊(プロフ) - 初めまして！若とのやりとりや紺炉さんとの絡みが好きすぎて毎回楽しみにしています！紺炉さん好きなのでニヤニヤが止まりません。これからも頑張ってください！！！ (2020年9月16日 0時) (レス) id: 0f7296ecf6 (このIDを非表示/違反報告)
トギリ(プロフ) - 紅蓮さん» 紅蓮様、ありがとうございます！面白いと言っていただけて本当にありがたいです！これからも更新頑張りますね！！ (2020年9月15日 23時) (レス) id: 735f3d0df8 (このIDを非表示/違反報告)
紅蓮 - 初めまして! 炎炎ノ消防隊×青の祓魔師 はじめて読ませていただきましたが、とても面白いです!これからも、更新頑張ってください! (2020年9月14日 0時) (レス) id: a938136fc3 (このIDを非表示/違反報告)
トギリ(プロフ) - 氷香さん» 氷香様、ありがとうございます！そう言っていただけて、作者はとても嬉しいです！！更新頑張ります！ (2020年9月13日 22時) (レス) id: 735f3d0df8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：トギリ | 作成日時：2020年8月16日 13時
