【黒死牟】この恋は心が保たない。弐

不運か幸運か＊肆 ページ20

＊


「Aさん、貴女が救われたいと言うなら…、
記憶の除去を勧めます」

珠世は、医者としてできることを提案してくれていた。

「それって、記憶を消すってことですよね…」

「はい。どこまでうまくできるかは分かり兼ねますが…、頭の片隅にでも入れて置いて下さい。」

その日、Aは二人の屋敷に泊まらせてもらう事になったのだが、運が悪いのか良いのか
Aは高熱にうなされる事になった。

気性のせいなのか、優しすぎる反面、Aは気持ちを溜め込みがちである。
本人は自覚がないが、現に

罪の意識によって、思い詰めすぎた。


自分への責め、自己満足のための他人の利用、他人からの共有拒否、果ては記憶消去。

この数日で、Aの頭はいっぱいいっぱいだった。




珠世は、Aの看病をしてくれた。
渋々、愈史郎も珠代を手伝う。彼にとっては最早、珠世との空間、時間を邪魔されてる事に頭にきているだろう。






＊


黒死牟さん。


私、どうしたら良かったんでしょう。



貴方が好きなのは、今も変わりません。でも、やっぱり苦しいです。

屋敷を出て行った時も、冨岡さんに会った時も、全部全部私のワガママなんです。



あの時、罪の意識を持ってしまった時点で、

私は死ぬべきだったのかもしれません。


そんな事は、貴方のことを思えば愚かな行いで、それこそワガママですよね。


もうどうしようも無いです。

行き場がありません。


苦しいです、黒死牟さん。

好きです、愛してます…。



もう、心が保ちそうにありません…。


＊

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