【黒死牟】この恋は心が保たない。弐

遭遇＊壱 ページ2

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屋敷を出て、3日。

目的地は浅草である。
なぜ浅草かと言うと、そこなら仕事に溢れて雇ってくれるのではと思ったからだ。
だが一昨日に訪れた街で、浅草へ行くのに人の足では一週間以上かかることが分かった。

その為、どなたか浅草へ行く道すがら、馬車を引いている者がいれば同乗させて貰おうとしていた。
しかしこの二日、滞在していた街ではどうもそのケがない。

諦めて近くの街に移ろうとしていた。


が、現在夕刻、日が沈もうと言うのに山を抜けられない。
道に迷った。

(これは非常に…！非常にまずい！
一刻も早く街へ行かないと！)

しかし見知らぬ土地、焦る心。
ひいては全く変わらぬ景色に、考える余裕が無くなっていた。

そして数分後、日が完全に沈んでしまった。

目の前で赤の差していた木々は闇を帯び、知らない風景に早変わりしていた。

(……！！！
これも、罰なのかしら)

幸せすぎて怖い、彼の前でそう言ったことがある。
彼は、幸せの代価となるのは前払いだったから、今更罰など当たらぬと仰ってくれた。

けど、これはその罰じゃない。

その幸せを裏切った罪。

(私は結局どうしたら良かったのかしら…)

絶望に近い感情の中、何かが目の前に現れた。

鬼だ

鬼だ

出てきてしまった。

彼とは大違いな、みすぼらしく阿呆面した鬼だ。

(……これに、喰われる…)


足は逃げ出していた。

何処へ行くでもなく、ただひたすら、
その場から離れるように。

けれど、一般の女人の走れる速さなど知れたもの。

当然目の前の食糧を見逃すわけも無い鬼は、鋭い爪で喉笛を切り裂こうとする。

鋭利な爪が、刹那、届こうとした時だった。



(……！？)


｢…！？？？？！あれ、
俺、いつの間に斬られ…………｣


背後にいた鬼は、頸を飛ばされ塵となって崩れていた。

(…！鬼狩り様…！)

ハッとして顔を上げると、その先に男がたっていた。



＊

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