村の掟 ページ47
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その頃…
敵のアジトである村では、
「いや！リダとイルチの仔だから『リダチ』にすべきじゃ！」
「だからもうその方式は古クセェっつってんだろジジイ！
『シャッタマン』にすべきだ！」
「何じゃそのセンスの欠片もない名前は！」
「んだとォ！？キレッキレだろうが！」
モストワ村の長老ドラルと、野生動物親衛隊の隊長が、先日生まれた狼のリダとイルチの一人っ仔の名前決めで争っていた。
そのため親衛隊の半分50余名は、この謎の名前決め会議に参加するハメになり、もういい加減面倒くさくなっていた。
残りの隊員は、村の守備に勤めている。
「なら『バキーラ』だ！
このどっちかは外せねぇ！」
「シャ何とかとバキ何とかじゃと！？
ふざけるな！親のファーストネームを受け継ぐのがこの村の掟じゃろうが！」
長老、ドラルの名は、
父ドラージュと、母シャルルから受け継いだものである。
「そんな考えはもう古いっつったんだろーが！！
もう名前なんぞファミリーネームだけ受け継ぎゃあ十分だ！」
「狼たちにファミリーネームは無いじゃろ！」
そんな討論の中、2人を黙って見ている隊員及び村人たちは、ヒソヒソと話し合っていた。
「なぁ…隊長は、何であのスタイルに拘るんだ？
悪いけど、本人にセンスないし…」
「俺、先代長老から、ガキの頃聞いたことがある。
何でも、親のファーストネームを受け継ぐのは、俺たちモストワの人間にネーミングセンスが無ェから何だとよ」
「…えっ、そうなの？」
「確かに。お前こないだ拾った野良猫にズリリンとかいう名前付けてたよな」
「お前だって！妙に懐いたからって小鳥にグリズルーって熊みたいな名前付けてたじゃん！
よりによって小鳥に！」
「…俺たち、ほんとにネーミングセンス無ェんだな…」
「…だな」
「じゃあ何で隊長は新規でつけたがんだ？」
「…本人の名前が『リス』だからだろ」
「あー、そっか。小動物だしな。
女ならまだしも、隊長男だかんな」
「男の娘ならまだしも、がっつり横に太ったオッサンだかんな」
「確か、母がリビアで父がロイスだったか？
両親は名前カッケェのになー」
「なー」
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作者名：renkon | 作成日時：2020年4月23日 12時
