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「…ただいま」
「あら？早いわね」
「なんか問題が起きたみたい」
言うだけ言って立ち去った人使は、私を振り返る様子もなく、まるで他人みたいだった。その場で立ち竦んで、ようやく動けたのが5分後くらい──それくらい衝撃的で。
部屋に行くまでの気力が起きなくてソファーに身を沈める。物珍しそうに私を見つつも、母は何も突っ込まなかった。こういう時ばかり黙るのだから、ズルイと思う。
「…なにこれ？」
テレビが見える体勢になった時、小さいテーブルに封筒があるのを見つけた。チケットを入れる様な長細い物で、手に取って観察する。中身を出してみれば旅行券の様だった。
「それね、お友達に貰ったのよ。でもお父さんと行ったらアンタ1人になっちゃうし、だからといって学校休む訳にもいかないからね」
別に良いかなって、お茶を傾けながら言う。
「なんで？行けば良いじゃん。私自分の事くらい出来るしさ」
体を起こしてチケットを戻す。母は思案した顔で、首を横に振る──遠慮しなくたって良いのに。
「お母さん達、結局土日は殆ど仕事だし結婚記念日とか疎かにしてるでしょ」
「まぁ、そうなんだけど」
「なら良いんじゃ？お父さんだって行くって言うと思うよ？」
2人は共働きなのだ、母はまだ融通の利く仕事だから殆ど家に居るのだけれど、父はそうじゃない。土日に至っては2人共に家に居ないなんて事はザラだ。だからこそ結婚記念日とか、そういう記念に関して疎かにしがち──私は別に気にせず行ってきて構わない。まぁ1人になりたいというのも、あるんだが。
「えー、じゃあさお母さんが言いにくいなら私言うよ？良い？チケット無駄になっちゃうよ？」
「んん…まぁ、お父さんが行くって言ったらね」
渋々といった感じだけれど上出来だ。頷いた母を眺めて、ソファーに再度寝転んだ。
あぁ、疲れた。ダメだ。
「寝るなら部屋に行きなさいっていうか、制服脱ぎなさいよ、シワになるじゃない」
「…うん…」
「生返事ね…」
呆れた声が返ってきたけど、それに返答する気力はなかった。
目を閉じると無表情の人使が私を見ていて、恐ろしかった。彼の言葉が、脳内で何度も繰り返されて苦しい。普通に出来ているのが不思議なくらい、怖くてしょうがない。
(そんな事…ないよ…)
挫折して行く姿を見たいだなんて、そんなの有り得ない。
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八百(プロフ) - すごく好きです！！続きめっちゃ気になります！！仲直りしてほしいけどもうそのまま行って欲しいって思ってしまう矛盾… (2019年3月21日 21時) (
レス) id: db047f61b6 (このIDを非表示/違反報告)
あお果実(プロフ) - とても面白いです！これからも応援してます(*´∀｀) (2019年3月6日 16時) (レス) id: 11c4dc89d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラ満開(プロフ) - めずさん» つい笑ってしまいました、コメントありがとうございます！頑張ります (2018年11月23日 17時) (レス) id: 2c4514670e (このIDを非表示/違反報告)
めず - なんでお星様1回しか押せないの！！！って感じに好きです生き甲斐をありがとうございまｧｧｧ！！！！本当はお星様50回くらい押してるので評価の回数に+50しておいて下さい(応援してます頑張って下さい) (2018年11月23日 2時) (レス) id: 73450a1efe (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラ満開(プロフ) - 谷崎さん» コメントありがとうございます！声をかけて下さっただけでとてもありがたいです…！ (2018年11月20日 0時) (レス) id: 2c4514670e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゴリラ満開 | 作成日時：2018年10月3日 3時
