1. ページ2
姿見の前で、ネクタイが寄れていないかを確認してブレザーに袖を通す。新品なので、まだ生地は私の体には合わずに服に着られている状態だけれど、まぁいいかと気にせず部屋を出た。
｢あぁ、おはよう。遅刻しない様に早くご飯食べちゃってね。あぁ、ブレザーは脱いで！汚れたら大変よ！｣
｢…うん、おはよう｣
席に着くなり忙しなく言われるので頷きつつ、ブレザーを椅子の背もたれに引っ掛けた。
｢なぁ母さん、カメラは何処だ｣
｢えぇ？其処のタンスの中じゃないの？｣
｢あぁ、そうだったか｣
バタバタと部屋の中を歩き回り、目当ての物を探している様だが──私は気にせず用意されていた朝食に口を付けた。
季節は春真っ只中。そう、言わずもがな入学シーズンである。故に両親は慌ただしくしているのだ。私は3月に中学を卒業し、晴れて高校生というわけなのだが──その本人より興奮しているのは些かおかしいと思うけれど何も言わない、どうせ晴れ舞台なのだからなんだと小言が始まるだけだ。
味噌汁を飲みつつ時間を確かめる。
｢…ねぇ、そろそろ8時になるよ｣
まだ用意に忙しない両親へ告げれば、
｢あ！もうそんな時間！！大変！ほら、A！早く家出なさい！入学式に遅刻なんて恥ずかしいわよ！｣
｢まだ大丈夫だよ。すぐ近くなんだし。2人とも慌てすぎ｣
｢え、あ…そ、そうね……｣
深呼吸をして、向かい側に座った母を眺めてから立ち上がる。勿論朝食は全て食べ終わってからだ。
｢じゃあ先に行ってるね｣
ブレザーに再度袖を通して、やはり真新しい鞄を掴む。
｢気を付けるのよ！｣
｢…すぐ会うし、すぐ其処だってば｣
呆れた様に返しつつもローファーに足を通し、未だ小言を言っている母を無視して外へ踏み出した。
目が痛くなる程に天気の良い朝だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 315人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
noise - 面白いですがもう少し文と文の間を開けた方が読みやすいですね、更新頑張ってください。 (2018年10月8日 3時) (
レス) id: c7ddf1a0db (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラ満開(プロフ) - 志乃さん» コメントありがとうございます、応援嬉しいです…頑張っていきますね！ (2018年9月25日 2時) (レス) id: e7696dbe06 (このIDを非表示/違反報告)
志乃(プロフ) - 応援してます (2018年9月23日 8時) (レス) id: 9e6db2f27b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゴリラ満開 | 作成日時：2018年8月26日 1時
