好きです。 ページ33
他の社員達は、組合やポートマフィアのところに行っているため、此処には私と国木田の二人しかいない。
今なら、良いかな。
私は国木田を真正面から見つめ、ぐっと背伸びをした。
それでもまだ身長差は埋まらず、彼のリボンタイを引っ張る。
国木田が抵抗する前に、私は自身の唇を彼のものに押し付けた。
触れるだけの何てことない、けれど特別なキス。
あっけにとられる国木田に、私は云った。
「好きです、国木田さん」
国木田は何も云わない。
「貴方のことが、どうしようもなく好きなんです」
今云わないと後悔する気がした。
「想いを通わせようなんて我がままは云いません。だから・・・」
その続きは云えなかった。
国木田に手で口を覆われてしまった。
「今は、ヨコハマを守ることが最優先だ。
お前のやるべきことをやれ」
何故か、国木田は、泣き出しそうな顔をしていた。
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武装探偵社。
港湾都市ヨコハマを守る、薄暮の組織。
社員の殆どが異能力を持っている。
其処は私が以前勤めていたところ。
そして、現在私の旦那さまが社員として働いているところだ。
彼の起床は早い。
したがって、私が起きるのも早くなる。
出来立ての朝ご飯を食べてもらうためだ。
まだ外が薄暗い内にこっそりと起き、割烹着を身に付ける。
何事にも手を抜かない彼は、食事にも厳しい。
味噌汁は毎回だしを取り、ご飯は炊きたて。
おかずは、必ず三品以上。
最初は大変だったが、彼のためと思えば頑張れた。
それに今は働いていないから、それくらい当然だ。
大きくはないけれど、住みやすい一軒家で、大好きな人と暮らす。
これ以上の仕合せがあるだろうか。
食卓に並べたら、後は彼を待つだけだ。
朝食まで、あと三分二十秒。
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彼はまだ目覚めない。
医務室のベッドで眠っている。
眉間の皺がとれ、安らかで、穏やかに見える。
もし、今私がこの首を絞めたら。
安らかなまま逝けるのではないだろうか。
このまま彼の時間を止めれば、もっと一緒に居られるのではないか。
全ての音が消える。
此処には、私と彼の二人だけ。
私は、ゆっくりと手を伸ばした。
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グーフィー(プロフ) - 紅羽さん» ありがとうございます。結婚かぁ…(遠い目 (2018年9月8日 23時) (レス) id: c591818929 (このIDを非表示/違反報告)
紅羽(プロフ) - 早く結婚しろやァァァァ!国木田さん尊い… (2018年9月8日 21時) (レス) id: 5947bb1147 (このIDを非表示/違反報告)
グーフィー(プロフ) - きのこまるさん» 乱歩さん回でした。 (2018年9月8日 21時) (レス) id: c591818929 (このIDを非表示/違反報告)
きのこまる(プロフ) - あっはぁ・・・!!乱歩さんが!活躍して!嬉しいです! (2018年9月8日 21時) (レス) id: c031244509 (このIDを非表示/違反報告)
グーフィー(プロフ) - 紅羽さん» シュンとする社長に肩ポンする春野さん…ってところまで想像してもらえれば。 (2018年7月30日 6時) (レス) id: c591818929 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:グーフィー | 作成日時:2018年6月18日 16時