蒼に溺れる 壱 ページ16
「なんなの・・・これ・・・」
私は思わず声を漏らした。
目に映るのは、探偵社を批判するような内容の記事。
そして、硝子に張り付き必死で叫んでいる様子の国木田。
手に持っていた新聞をぐしゃりと握り潰した。
一体、何があったというのだ!
がしゃん、と乱暴に扉を開ける。
その音に驚いた敦と国木田が振り返った。
「これ・・・どういうことですかっ!」
私は新聞を掲げた。
叫び声が事務所に虚しく響く。
「あ、それは」と答える敦も同じものを持っていた。
「昨日の事件で、一寸、ね・・・」敦は言葉を濁す。
事件のことは知っている。
ヨコハマで、連続失踪事件が起こっていたのだ。
昨日はタレコミがあったとかで、三人はその現場に行っていたはずだ。
ちなみに、私だけ除け者になるのは嫌だと駄々を捏ねてからは、春野やナオミが依頼について詳しく教えてくれるようになった。
「じゃあ、罠だったって云うんですか!」私は声を荒らげた。
「あぁ、これが敵の狙いだったようだ・・・。俺の出番では、なかったのかもな」
そう云う国木田は、いつもより頼りなく見えた。
顔に影が差している。
私はその姿を見て、どうしようもなく情けなくなった。
だって、こんなの違うじゃないか。
私の理想のひとはもっと・・・。
「Aさん!?」
敦が驚きの声をあげる。
私が泣き出したからだ。
「なぜお前が泣く」国木田が問う。
「だって・・・こんなの、あんまり、ですっ」
息が上手く吸えず、途切れ途切れになりながら答える。
国木田はやれやれといった調子で、私の頭に手を置く。
「泣き虫は嫌いだ」
「国木田さん・・・」
そんなことを云われても涙は止められない。
国木田は私の頭をぽんぽんと撫でた。
「顔を洗ってから医務室に来い。被害者と会わせてやる」
私は急いで化粧室に駆け込み、蛇口をひねった。
水が勢いよく溢れる。
顔を洗い、涙も一緒に流した。
ハンカチで拭いてから、鏡の自分と向き合う。
連日泣いているので、涙腺はもうぼろぼろだ。
こんな顔で人に会うのは憚られるが仕方がない。
ぱちん、と頬を叩き、気合を入れなおした。
医務室に行こうとして、私ははたと気付いた。
さっき、国木田に頭を撫でられてたっけ?
冷静になった頭で先程のことを順に思い出す。
・・・全てを思い出した。
誰が気にすることでもないが、とても恥ずかしい。
顔の火照りが収まるまで、もう暫く化粧室に篭る羽目になってしまった。
52人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
グーフィー(プロフ) - 紅羽さん» ありがとうございます。結婚かぁ…(遠い目 (2018年9月8日 23時) (レス) id: c591818929 (このIDを非表示/違反報告)
紅羽(プロフ) - 早く結婚しろやァァァァ!国木田さん尊い… (2018年9月8日 21時) (レス) id: 5947bb1147 (このIDを非表示/違反報告)
グーフィー(プロフ) - きのこまるさん» 乱歩さん回でした。 (2018年9月8日 21時) (レス) id: c591818929 (このIDを非表示/違反報告)
きのこまる(プロフ) - あっはぁ・・・!!乱歩さんが!活躍して!嬉しいです! (2018年9月8日 21時) (レス) id: c031244509 (このIDを非表示/違反報告)
グーフィー(プロフ) - 紅羽さん» シュンとする社長に肩ポンする春野さん…ってところまで想像してもらえれば。 (2018年7月30日 6時) (レス) id: c591818929 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:グーフィー | 作成日時:2018年6月18日 16時