L O V E .

I hate you 2. ページ30

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｢アレは、そのっ…｣



言いかけたところで彼は静かに笑って
デニムのポケットから鍵を取り出すと、
私の部屋の隣の扉の前で立ち止まった。



｢あれ…？｣


｢え？｣


｢その部屋…｣



そこは、確か、アイツの部屋のはず…
そう思ってついつい、問いかけてしまった。
すると、彼は私が全て言い終わる前に
何か勘づいたらしく…



｢ああ…｣


｢えっと、俺達みんな一緒に住んでるんだよね｣


｢え、あ…｣
(そうだったんだ)



てっきり、皆バラバラに住んでいるのだと
思っていたのに皆で同居していたと聞くと
何だかとても意外で、拍子抜けしてしまった。



｢私の隣にこんな大勢で住んでたなんて｣


｢知らなかった｣



小さな声でそう言って
鞄から鍵を取り出して笑えば、
後ろにいた他のメンバーも



｢隣なの！？｣



って、少し興奮気味に話に入ってきたりして
私達はそのまま少しだけ自己紹介も兼ねて
立ち話をした。



｢じゃあ、またね｣


｢ナナさん、またね！｣


｢おやすみ｣



一人ずつ順番に挨拶を交わして中へ入っていく
メンバー達を見送りながら手を振った。


すると、今までメンバー達の背後に隠れて
見えていなかった彼の姿が見えた。



｢………？｣
(珍しく静かだな)




北人君が収録を見ていた私の存在に
気付いていたのなら、
もしかしたら彼にもバレているのかもしれない


だから彼はあんな複雑な表情を
浮かべているの…？



｢あの、入らないの…？｣



出来るだけ平静を装いながら、
立ち止まったままの彼を眺めれば
彼はお決まりの不機嫌顔をして、



｢いや、もう入るけど…｣



そう言って、
少しきつめの口調で言い返された。


何でそんなにいつも不機嫌なのか
理由は分からないけど、
今日は特に機嫌が悪いらしかった。


それがもしかしたら番組収録の事だったら
どうしようかと思いながらも…



｢何かあったの？｣



気になった事を素直に口に出す。
すると彼は大きく目を見開いて
突然叫んだのだった。



｢お前が言うなよっ！｣



バタン、と大きな音を立てて
扉の奥に姿を消した彼の姿は、
どしゃ降りの雨の日に私が行なった行為に
どこか似ていた。



｢何なの、アイツ！｣



人がせっかく普段出さない優しさを
振り撒いてあげたのに、
やっぱりアイツは
生意気なムカつく隣人でしかないんだ。



見直したって思ったの、
取り消してやる___





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