L O V E .

Why are you here ? ページ17

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某テレビ局の控え室。
出番待ちのメンバー達がメイクを終えて
各自がゆったりとした時間を過ごす中で
一際ご機嫌な人物が約一名。



｢…………。｣
(壱馬さんが鼻歌、って)



あのどしゃ降りの雨の日以来、
ずっと不機嫌だったはずの壱馬さん。


それが今日はいつも以上に笑顔を絶やす事なく
更には鼻歌まで歌っている姿に、
慎を筆頭に、メンバー達全員が
異様なこの光景に目を丸くしていた。


かたや、
その本人はというと……



｢……………。｣
(思った以上に上手くいったな)



ベランダで２度目の再会をした時、
やけに年上をアピールしていた彼女が
気に入らなかった。


だから偶然会ったコンビニで
わざとらしく"お姉さん"と呼べば


案の定、
苛立ちを露にした彼女の悔しそうな顔に
俺はにやりと口の端を上げて笑って見せた。



(アイツに年下扱いされんのは、何か腹立つ)



彼女が一体何歳なのかなんて知らない。
けど、どうせたかが１、２歳違うくらいだ。


少し早く生まれてきたからって
俺と彼女に大きな差があるわけじゃない。


だから、ちょっとだけ仕返しに罠を仕掛けた。
まぁ、まさかあんな上手くいくとは
思ってなかったけど…



「なーんか、壱馬さぁ…」


「ん？」


「今日、やけに機嫌良くない？」


「何か良いことでもあった？」



メンバー達はどうやら、
終始思い出し笑いを繰り返す俺の光景が
気になって仕方ないらしい。
意を決して聞いてきた北人に続いて、



｢壱馬さん、さては女の子絡みじゃ…？｣



なんてニヤニヤしながらぽつり、と翔平が
そう言えば陸さんや北人達も



「ああ、なるほど、そっちねー！」


「えー、何それ、初耳！」



とか、言って勝手に盛り上がり始める。



｢……………。｣
(いや、翔平、余計な事言うなって…)



とは、さすがに言えず、
少しムスッとした表情になり黙り込めば
タイミング良く控え室のドアが開き
スタッフさんから声がかかった。



『そろそろ、リハーサル始めますので』


『スタンバイお願いします』



その一声に救われ、追求を逃れた俺は
少しだけホッとして肩の力を抜いた。
ぞろぞろと揃って控え室を出ていく
メンバー達の最後尾に俺も続いた。



｢……………。｣
(まぁ、別に隠してる訳じゃ無いけど)



どうやらまだメンバー達は、
マンションの隣人である彼女の存在を
知らないらしい。


特別な理由は無いけど、俺はまだ彼女の事を
メンバー達に話してなかった。


それがまた誰も知らない秘密みたいで
少しだけ楽しみでもあった事に気付くのは
もっと後の話___



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