L O V E .

Long time no see. ページ36

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『お前が言うなよっ！』



そう言って
怒鳴ったアイツの心意が分からなくて、
靄がかかったような気持ちのまま
今日で一週間を数えていた。


彼らの住む隣の部屋はその間とても静かで、
まるでこの数日間が夢を見ていたかのように
静寂に包まれていた。



｢……………。｣
(仕事かな…)



壁一枚隔てた隣の部屋。
今まで気にした事の無かった事まで
ついつい気になってしまう。


そんな微かな変化に
自分でも驚きながら過ごした
一週間目の金曜日。


仕事が思ったより
手間取って残業となってしまった。



｢ナナさぁん、｣


｢こっちまだ全然終わりそうに無いです…｣



山積みの書類に脱力し、
書類の上に体を投げ出した後輩は
今にも泣き出しそうな表情で救いを求める。



｢こっち、片付いたら手伝ってあげるから…｣


｢そんなんじゃいつまで経っても帰れないよ？｣


｢でも…｣


｢でもじゃないでしょ？さっさと手動かして｣


｢は、はい…！｣
(怒ると怖いんだよな、ナナさん)



やれやれ、そんな面持ちで
びしっと言えば彼女はすぐに姿勢を正して
再び書類に目を通した。


その表情は不満気だったが
ようやく真面目に仕事に取り組みだした彼女に
小さく息を吐き、笑みが溢れた。



｢……………。｣
(ああいうところ、憎めないんだよね)



カタカタとパソコンのキーボードを叩く音を
背中に感じながら、私は手元の資料を整え
彼女に言った。



｢ねぇ、｣


｢終わったら飲みに行かない？｣



キャスター付きの椅子を動かして
彼女に近づいてそう言えば、
後輩はたちまち笑顔になり
ひとつ返事で頷いた。



｢行きます、行きます！｣


｢あはは、じゃあ頑張ろうね｣



こうして私達は残された業務を必死にこなし、
晴れて居酒屋へと向かう事になった。



｢じゃあ、また来週ね｣


｢はぁ〜い！｣



居酒屋でたっぷり２時間。
会社での愚痴を言い合って
いい気分で酔いが回った頃、


女だけの飲み会
いわゆる女子会なるものはお開きとなった。
久しぶりに出先で飲んだお酒が美味しくて
身体中が開放感を感じていた。



｢さ、帰ろう…｣



駅で後輩と別れ、一人改札を抜けた。
その足取りはやけに軽くて
地面が歪んだように揺れる。


あれ、もしかして…


そう思った瞬間、
ぐらりとふらつく体に
少し飲みすぎたと知った。



｢……………。｣
(まぁ、たまには良いか…)





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