L O V E .

I don't know 2. ページ22

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｢それでは、そろそろリハーサルに入ります｣



散々待った後、スタジオに入れてもらえば
少ししてスタッフさんがそう言った。


途端に慌ただしくなるスタジオ内には
忙しなく走り回るスタッフさんの姿が
あちこちに見られた。


その一方で、もう間もなく
リハーサルに彼らが現れると聞いた観覧客
つまりファンの女の子たちは、
まだ姿の見えない内から
黄色い歓声を上げはじめる。


浮き足だつファンの女の子に圧倒されながら
渋々持たされたメッセージボードを握りしめた。



｢すごい歓声だね……｣
(何か、こっちまで緊張しちゃう)



他人事のようにそう言って
隣に立っている後輩の彼女へと
ちらりと視線を向ければ、



｢壱馬〜！｣


｢…………。｣
(駄目だ、聞こえてない)



もはや私の存在なんて忘れて
他の女の子達に負けじと声援を送る姿が
目に入り、私は静かにまた溜め息を吐いた。



｢壱馬、ねぇ…｣



そんなに彼が好きか、と
心の中で突っ込みを入れて
視線をステージ上へと移せば
タイミング良く、彼らはそこに現れた。



｢わ、来た…！｣
(どうか見つかりませんように)



メッセージボードを握る手に思わず力が入る。
きゅっ、と目を閉じて願いを込めて
再び目を開ければ、


センターに立つ彼は満足そうに笑って
軽く手を振りファンに目配せをした。



｢こんにちはー！｣



そう言って、
にっこりと笑った瞬間
割れんばかりの大声援が耳を貫いて、



｢…………っ！｣
(すごい人気)



私の前では、あれほど生意気な彼も
ファンにとってはかけがえのない存在なのだと
目に見えて実感した。


マンションでの勘違いもこれでは仕方ないか、
なんて思えば苦笑いが溢れた。



｢それでは、リハーサル始めまーす｣



スタッフさんの掛け声に合わせて
彼が合図を出し、
いよいよ始まったリハーサル。



｢ナナさん、ボードボード！｣


｢え゛っ、ああ、これね…｣



イントロが流れ、リズムに合わせて
体を揺らす女の子達に遅れを取っていると
後輩から慌てて
メッセージボードを掲げるよう指示された。


こんなボードを持っている自分を想像すると
少し恥ずかしくて何だか屈辱的で仕方ない。



｢……………。｣
(ねぇ、本当に帰りたいんだけど！)



恥ずかしさから真っ赤に照れた私は
渋々ボードを掲げながら
何とか周りに合わせてついていくのに
必死だった。
すると、



｢あっ！｣


｢へ？｣
(……なに？)




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