Bitter Sweet 4.

Can't stop 6. ページ27

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「ねぇ、佐智雄」


「何処にあるか言ってくれれば私が探すよ…？」



リビングの棚をがさがさ漁ってお目当ての物を探す
佐智雄の背中に向かってそう投げ掛けてみれば、



『良いから、お前は座ってろ…』


「…でも、」



唯ちゃんはまだ沢村君と居るのか帰る気配もなく
佐智雄のお母さんも仕事に出ているようで
この家には今、佐智雄と私しか居ない。
それが、どうにも落ち着かなくてそわそわする。


私が言い出した事なのに、何やってるんだろう。
そう思うと苦笑いになってしまった。
佐智雄を眺めて黙り込んで居るとしばらくして、



『…ほら、あったぞ』


「あ、うん」
(何だろう、すごく緊張する)



棚から見つけた救急箱らしき物を手に
こちらに振り返った佐智雄はそのままゆっくりと
私の方に歩み寄ると隣に腰を降ろして
救急箱を前のテーブルにそっと置いた。



「じゃあ、これ、借りるね…」


『ああ』



すとん、と隣に座った佐智雄との距離が近くて
少しだけ胸の鼓動が早くなった気がして、
普段通りの何気ない会話にも上手く返せなくて
何となく言葉に詰まってしまう。



「えっと…」
(ああ、時計の針が気になる…)



壁に備え付けられた時計のチッチッチッ、と鳴る
秒針の動く音がやけに耳に響いて仕方ない。
二人きりなんてシチュエーション、
これまで何度も何度もあったはずなのに
どうして今日はこんなに意識してしまうんだろう。



『A、どうした？』


「えっ、あ、ごめん、ボーっとしちゃって…」


「じゃあ、早速始めよっか」



壁の時計をぼんやりと眺めていた私に気付いて
佐智雄が声を掛けたことで
漸く、ハッとして我に帰った。


とりあえず手持ち無沙汰になってしまって、
この緊張から逃れようとテーブルの上に置かれた
救急箱の中から取り出した消毒液をコットンに含み
佐智雄の唇の端にゆっくりとそれを宛がうと



『………っ！』


「ごめん、痛いよね？」



傷口に染みたのか咄嗟に体を後ろに引いて
痛みに顔を歪めた佐智雄がそっぽを向いた。
その姿に、少し申し訳ないと心では思いながらも
ここで止めたりして菌でも入ったら大変だと
半ば強引に佐智雄との距離を詰める。
そして、



「でも、ちょっと我慢して」


「切れてるからちゃんと消毒しなきゃ…」


『ああ、分かってるよ』



そう言って、逃げ腰になる佐智雄の唇に
再びコットンをとんとん、と数回押し付けた。



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