Bitter Sweet 4.

Can't stop 4. ページ25

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『悪ぃ…』


『ふっ、一瞬、負けるかと思って焦ったよ…』



ぽつり、と呟くようにして有剣に詫びると
有剣と志田君がハモるようにそんな事を言い
苦笑いを浮かべながら佐智雄の方へ
にやり、と意地悪な笑みを浮かべていたものの



「…………。」
(有剣らしい言い方だなぁ)



その声はどこか優しくて、穏やかで、
心の奥底では佐智雄を労っているような口振りに
二人の関係は本当に拗れてなかったんだと
そう、少しホッとしたりもして、



「…佐智雄、帰りに病院行こう？」



とりあえず、あれだけ殴り合って
傷を負ってないはずは無いだろうから
心配だし、念のため病院に連れて行こうと
さりげなく提案してみたものの、



『いや、良い、別にそこまでひどくねぇよ…』


「え、でも…」
(顔とか痛そうなのに本当に良いの？)



あっさり、拒否されてしまって途方に暮れていると
佐智雄が少し黙って振り返るのを目にして
私も後ろへ視線を向けてみれば、



『うるせぇな、次は絶対勝つんだよ…』


『…………。』
「…………。」
(佐智雄にとってはライバルみたいな感じなのかな)



地面に座り込んだまま、
そんな事を言って仏頂面を浮かべる花岡君を
佐智雄は少しその光景を眺めた後
ふっ、と表情を崩して笑っていた。



「ねぇ、次は絶対勝つ、って言ってるよ？」


「どうするの、佐智雄？」



その答えなんか聞く前から分かってるけど
それでも何となく佐智雄の口から聞いておきたくて
少し意地悪な言い方で佐智雄にそう問いかければ、



『いや、別に、どうもしねぇよ… 』


『俺は、大事な物さえ守れたらそれで良い…』


『無意味な争いには興味ねぇ』



ふぅ、と溜め息を吐くようにして遠い目をすると
ゆっくりと視線を向けた佐智雄が私を視界に捉え、
口角を持ち上げながら優しい物腰で微笑んだ。
ただ、それは長くは続かずに、



『けど、楓士雄が挑んでくるなら話は別だな』


『その時は全力で潰す』



そう言って、再び花岡君に視線を移した佐智雄の目は
まるで新しいオモチャを見つけた子供のように
キラキラと輝いていた。
その証拠に佐智雄がふっ、と不敵に笑いながら
悪戯に口角を上げたその姿を私は見逃さなかった。



「…………。」
(佐智雄、花岡君の事、絶対気に入ってるよね)



ただ、単純に仲が良いって事でもなさそうな二人に
何だか男同士にしか分かり合えない領域みたいな
物なんだろうな、と一人勝手に理解した。



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