Bitter Sweet 4.

Come together as one 5. ページ21

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「バーカ、そんな顔すんな」


「お前が見てる前で俺が負ける筈無いだろ…」


「心配要らねぇよ、大人しくそこで待ってろ」



惚れた女を前にしながら負けるなんて
そんな格好悪い真似、出来る訳ねぇだろ。


頭の中でそんな事を思いながら
そっとAの頭に手を乗せると
柔らかく微笑んで見せれば、
分かりやすくAの表情が綻んでいった。
そして、



『うん、分かった…』


『じゃあ、佐智雄のこと信じて待ってる』



ゆっくりと表情を和らげたAがそう言って
俺を見上げると、口角をきゅっと持ち上げながら
ふわり、と何時ものように微笑んだ。



「ああ、俺を信じろ」
(相変わらず綺麗な顔して笑うな、お前は…)



その穏やかな笑顔に何時も救われて
それは、どうやら今日も例外ではなく…


溜め息混じりに息を吐けば
何処と無く肩に入っていた力が
ふっ、と抜けていくのを体で感じると
無意識に楓士雄との闘いを前にして
僅かに気負っていた自身の姿に気付かされたりして…


そんな自分自身を奮い立たせるべく、
Aの髪をそっと撫で、
その指で首元にぶら下がるAのネックレスを
そっと持ち上げるようにしながら
俺は口の端を持ち上げ、不敵に笑って見せた。



「お前が居るなら負ける気がしねぇ」


『ふふっ、本当にそうだと良いけどね』


「バーカ、嘘じゃねぇよ」
(俺は、本当にそう思ってる)



体の奥底からじわじわと這い上がってくるように
俺の中に力が漲っていくような
そんな、不思議な感覚で…


今、この場に居るAの存在は、
間違いなく俺にとっての原動力で
こうなると、もう誰にも負ける気はしなかった___



『我が儘聞いてくれてありがとな』



そうして、
満を持して対峙した楓士雄の発した言葉に



「初めて会った時から、」


「俺もこうなんじゃねぇかな、って」


「思ってたからよ…」



そう言って言葉を返した俺は
拳を固くして楓士雄へと向かって行った。
あの日、決してぶつかる事のなかった拳を
今まさに交えるべくして
俺と楓士雄の闘いは幕を切った___









Bitter Sweet

ep.32 Come together as one.

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