Ｓ Ｅ Ｖ Ｅ Ｎ # ３

封印 ページ45

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ハーフタイム終了間近＿＿


練習を終えて、控え室に戻ろうとする山王と湘北の目の前で桜木がフリースローラインからの大ジャンプを見せ付け、そのままダンクを決めようとしたのだが、あえなくリングに弾かれてしまい失敗に終わった。


そのまま地面に転がった桜木の両足を掴んで安田と木暮が気まずそうにせっせと運ぶなかで、



「…沢北、お前あそこから跳んでリングに届くか？」



ざわつきの残る会場内で河田が問いかけたその一言に、



「まさか…無理です」



桜木の跳躍力の高さに驚きを隠せない沢北が静かにそう返したのを横目にナナがボールの後片付けを済ませると、



『昨日も思ったんだけど…あの桜木君って子、色々と凄いよね…』



この大舞台でも全く物怖じしない大胆な行動を取る桜木の姿は自然と周囲の目を釘付けにするインパクトを持っていた。


そして何よりナナが驚いたのは、リングからコートの床に勢い良く叩きつけられておきながら桜木が何一つ、怪我を負っていなかった事だった。


強靭な肉体の持ち主である事は間違いないと確信したナナの口から出てきたその一言に、



「そうだな、一応注意しとくか…」



やってる事は滅茶苦茶だけど、用心に越したことはないよな…と、脳内で独り言ちた沢北も静かに頷いてみせたのだった。


その一方で一足先に控え室に戻ったリョータは試合が近付くにつれ、次第にソワソワとしてジッとしていられなくなってしまい…



「おい、リョータ！どこ行くんだよ…」


「いや、何かジッとしてると悪いイメージばっか浮かんでくるんだよ。だから、ちょっとその辺走ってこようかと思って…」


「試合前にバテないように程々にしとけよ？」


「おう、分かってるよ」



んじゃ、行ってくる。心配そうな表情を浮かべた安田を安心させようと、平静を装って笑いながら控え室を出て来たリョータだったが…



「…ハッ、ハッ」



キュ、キュッ…とバッシュを鳴らして通路のダッシュを延々と繰り返すリョータの表情は落ち着きとは程遠いものだった。


そこをたまたま通りがかった監督の安西に見つかってしまい、ピタリと足を止めたリョータが「先生」と小さくそう言えば、



「宮城君、そんなにガムシャラに走ると試合中にバテるよ…」



走り回るリョータを心配してそう言った安西監督の言葉に、リョータは顔を滴る汗を気にする素振りすら見せずにこう言った。



「動いてないと…ジッとしてると悪いイメージばかり浮かんでくるもんで」



一丁前に沢北の前では強気な事を言ってのけたものの、日本中の高校生ガードが心を折られた深津とのマッチアップに未だ不安を覚えるリョータ。


土壇場でまた尻込みしそうになる自分の弱さを振り払うべく、こうして走り回っていたのだが特に結果は奮わずじまいで…



「………。」
(あと、リストバンドの秘密も気になるし)



内側に隠された秘密をどうしても暴きたいリョータだったが、ナナから執拗に念押しされてしまった手前、何となく約束を破るのは気が引けて、しぶしぶ試合開始寸前までリストバンドをロッカーのかばんの中で封印する事にしたのだった。


何かにつけてソワソワと落ち着かないリョータに対して安西監督は、



「ＰＧのマッチアップではウチに分があると私は見てるんだが…」


"相手は確かに180cmと大きい…
でも今さら何を恐れることがある？


子供の頃からずっとそうだったでしょう＿＿"



「………っ！」
(俺に分がある)



スピードとクイックネスなら絶対負けない。そうハッキリと言い切った安西監督の言葉にハッとさせられたリョータは、ようやくそこで試合への不安を振り払い、自信を取り戻す事に成功したのだった。




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