Ｓ Ｅ Ｖ Ｅ Ｎ # ３

損な役回り ページ5

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「んで結局、三井サンの"諸事情"とやらは何だったんすか？」



諸事情の意味を表示した携帯画面を三井の目の前に掲げて見せたリョータが、片眉をクイッと上げて悪戯に笑いながら軽い気持ちでそう問いかければ、



「べっ、別にわざわざ改まって話すほどの事でもねーよ…！」


「へぇー」
(いや、キョドり方半端ねぇけど)



あからさまに挙動不審な態度でワタワタし始める三井を見て、つくづく嘘が吐けねぇ人だな、と勝手に三井を哀れに思ったリョータはひっそりと悲しげな顔を浮かべて、先輩である三井の事を脳内で勝手に残念な生き物として認識するのだった。


三井のただならぬ焦りっぷりから、こりゃ弄りがいが有りそうだ、と一度は思ったリョータだったが、余りにも動揺の激しい三井の姿にすっかり興ざめした様子で、



「おっ、そうだ。俺もそろそろ便所行っとかねぇと…」



試合までもうあんま時間もねぇ事だし…なんて、しれっとそう言って見せると、先程三井が閉めたばかりのドアに向かって歩き出したリョータに、再び三井はギョッと目を見開き、



「ちょっ、おい、待て宮城！早まるな！」



あんなモン見せたらコイツまた発狂して何仕出かすか分かったもんじゃねー…と、慌ててドアに手をかけようとしたリョータに割って入った三井はドアの前に立ちはだかってみせた。



「は？ちょっと、何なんすか、三井サン…」



いや、ただちょっと便所行きてーだけなのに
早まるなとか言われてもなぁ…
さっぱり意味分かんねぇ、しかも何故か挙動不審だし。



あからさまな割り込みにムッとしながらも、先程から妙に挙動不審続きな三井の姿を訝しみながらリョータが苦笑いでそう言えば、三井は動揺する心を必死に誤魔化しながらあの手この手でリョータを行かせまいと試みる。



「良いか宮城、俺はお前の為を思って言ってんだ。今はこのドア開けねー方がお前にとっても得策だと俺は思うぜ…？」



つーか、今ドア開けたらまた昨日みてーに確実に面倒くせぇことになっちまうだろうが…。とは、さすがに口が裂けても言えない三井は回りくどい言い方でそうリョータを何とか諭しにかかったのだが、



「いや、さっきからなに意味分かんねーことばっか言ってんすか、アンタ…。とにかく、俺は便所に行きてぇの。分かったら、さっさとそこ退いてくださいよ」


ボソッ
「…ったく、しょうがねぇな」
(つーか何で、こう毎回、毎回…)



俺ばっかりがコイツらのいざこざに巻き込まれるんだ。いっつも損な役回りばっかじゃねぇか。と、憤慨して溜め息を漏らした三井はガシガシと後頭部を掻き乱しながら小さく肩を落として、リョータへ最終確認を取る事にするのだった。



「本当に良いんだな、宮城？このドア開けてから後で後悔したって、もう遅せぇぞ…」


「いやいや、後悔も何も、ちょっと便所行くってだけの話に何をそんな大袈裟な…はぁ、ヤレヤレ…」


「なっ、大袈裟だぁ？てめぇ、さっきから聞いてりゃベラベラと生意気な口ばっか叩きやがって！ロクにこっちの気も知らねぇくせに何なんだよ、ったく…！ああ、そうかよ。なら、もう勝手にしろ！一応、俺は忠告したからな」



飄々とした態度でリョータから小馬鹿にされた三井はついにブチ切れて、もうどうなろうが知ったこっちゃねぇ！と込み上げる怒りにワナワナと震えながら半ばヤケクソ気味に吐き捨てるとドアの前からゆっくりと退いて、リョータにしぶしぶ道を開けたのだった。




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