Ｓ Ｅ Ｖ Ｅ Ｎ # ３

節目を迎える ページ39

.




リョータとの話が落ち着いた頃合を見計らってナナを無事回収した沢北が毎度の如くナナの腕を引いて山王軍団の待つバスへと戻れば、



「よし、これで全員揃ったな」



沢北とナナの二人を見てふっ、と含みのある笑みを浮かべた堂本監督がそう言って山王軍団を乗せたバスが旅館へ向けてゆっくりとスピードを上げて走りだす。バスに乗り込んだ際に深津から、



「もう沢北の隣しか空きが無いピョン」



と、半ば強制的に言われてしまい沢北の隣への追いやられてしまったナナ。遅れてきた手前、文句も言えずにしぶしぶ言われた通りに従って沢北の隣へ座り、ふぅ、と一息吐いたまでは良かったものの…



『栄治ごめん、私ちょっとお手洗いに寄りたいから先行ってて』


「…っ、おう。分かった」


『……あ゛』
(ヤバい、そうだった)



ここに来て今更ながらに沢北に嘘を吐いて飛び出してきた事を思い出したナナは、サァーっと青ざめた表情を浮かべて縮こまった。


まるで最初から自分がリョータの所に行くのを見越していたかのようにしれっと湘北の控え室前の通路にやってきた沢北の様子を思い出して、



『あ、あのね栄治、さっきのは、その、お手洗いを探してたら、たまたまリョーちゃんと出くわしちゃって…』



何か上手いこと言い訳をしようと口を開いたものの、結局しどろもどろになるナナの姿に、沢北は分かりやすく溜め息を吐いてみせるとジトりとした目付きをしながら呆れたようにこう言った。



「バーカ、あんな見え透いた嘘で俺のこと本当に騙せるとでも思ってたのかよ…」



お前すぐ顔に出るタイプだからバレバレなんだよ…と、最後に付け足しながら肘でナナの腕を突いた沢北は、前屈みに体を傾けるなりチラッとナナの顔を眺めると、更に続けて…



「だからナナが宮城を好きな事だって、俺はもう知ってる…」



話の核心に触れる言葉をゆっくりと口にした沢北は、ふっ…と小さく息を吐くように笑ってナナの髪をわしゃわしゃと掻き乱したのだった。



『…えっ！』
(嘘、何で、何時から！？)



リョータを好きだとついさっき気付いたばかりのナナからすれば、何故それを沢北が知ってるのかと突っ込みたくなる光景だった。



「………。」
(ほらな、すげー分かりやすい)



目を見開いて驚くナナの反応を見て、やっぱりな、と沢北が肩を落として溜め息を吐く。


沢北から顔に出るから分かりやすいと言われたナナだが、先程自分がやってしまったあからさまな反応を客観的に見てみれば確かに納得のいくもので…



『嘘吐いたりして、ごめん…』



"でも、栄治を特別な存在って言ったのは嘘じゃないよ…


私が学校や部活で気兼ねなく過ごせてるのは
栄治が居てくれるお陰だと思ってるし、
バスケに熱中してる栄治の姿を観るのも好き。


だから、その、上手く言えないけど
栄治と居る事ってもう私にとっては日常で
ずっと、それが続けば良いなって思う…


でも、それは友達とか仲間としての気持ちが強くて
恋愛感情とはまた別なんだと思う
栄治の気持ちに応えられなくて、本当ごめん…"



今ここではっきりと言わなきゃ駄目な気がすると、沢北から何となく漂う空気を察知したナナが少し気まずそうに眉を顰めながらゆっくりと言葉を選んで本音を漏らすと、



「…っ、分かったから、そんな泣くなよ」
(泣きたいのはこっちだから)



けど面と向かって謝られたらもう受け入れるしかねーよな…と、自身が数分前に想像した通りの展開となった事をしっかりと認識した沢北は一人静かに頷き、肩を震わせ泣きじゃくるナナを見て苦笑いを浮かべながらもしっかりと抱き寄せたのだった。



.

▼→←持ってけドロボー

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す