Ｓ Ｅ Ｖ Ｅ Ｎ # ３

見え隠れする本音 ページ30

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ようやく憧れと好きの違いに気付き、此処が今後の運命を決めるターニングポイントだと言っても過言では無い重要な場面を迎えたナナ＿＿


だが、"憧れと好きの違いに気付けた時はまた二人で話そう"と秘密基地で誓ったソータはもうこの世を去ってしまった。



『……っ、』
(どうしたら良いの、ソーちゃん)



いざ、自分はリョータが好きなのかもしれないと自覚した瞬間からどんどん溢れて留まることを知らない醜い感情。


小さな嫉妬心が何時しか誰にもリョータを取られたくないという強い独占欲へ形を変え、その結果こうしてリョータの背中にしがみついてしまったのだが…



『…………。』
(もう嫌だ、なんか泣きそう)



ナナの中に予期せず芽生えてしまったリョータへの恋心と嫉妬心。その複雑な感情に胸が押し潰されそうになり、制御しきれないほど昂った感情は次第にナナの瞳にじわりじわりと涙を滲ませていくのだった。


その一方で、



「…………くっ、」
(この無自覚鈍感め、またこんな可愛いことを…)



急に自身の背中に凭れるように擦り寄って来たかと思えば、自分の背番号７の文字をきゅっと握りしめたナナのさり気ない仕草に一瞬で心ごと持ってかれそうになるリョータ。


今になって思えば、豊玉戦でのハーフタイム時にお揃いのリストバンドに口付けたリョータの仕草をナナが真似てやり返してきた時も驚いたのだが…


それに加えて、この大胆なナナの行動が示す意味は果たして何なのかとリョータは必死に試行錯誤していた。


そうして、辿り着いた結論＿＿



｢………ハッ！｣
(もしかしたら、ナナも俺のこと)



これはもしかするともしかするんじゃ…？なんて淡い期待を一瞬、心に抱きかけてパァっと頭の中に花を咲かせたリョータだったが、



｢……………。｣
(いや、でも、待てよ)



相手は、この最強・無自覚鈍感だぞ？


さすがにそんな思い通りにいく訳ねぇよな
幾ら何でもそれは自分に都合良く考えすぎだ


しかも、もしこれで勘違いだったとしたら
後で痛い目見んのは確実に俺の方だし？



そんな否定的な考えがすぐにリョータの脳内を支配し、思わず顔を歪めて苦笑いを浮かべたリョータはそのままブンブンと頭を振って都合の良い思考を打ち消すと、肩を竦めて小さく溜め息を漏らしたのだった。



「…ふぅ」
(ここはひとまず、平常心、平常心っと… )



ふぅ、と息を吐き、一旦ざわつく気持ちを落ち着かせたリョータはゆっくりと顔だけ振り返ってナナの様子を確かめる。


そうして振り返った先でリョータが目にしたのは、



「ちょっ、おい、ナナ…」
(いや何でそうなった？)



大きな瞳にたっぷりと涙を溜めながらも必死にその涙が溢れないように堪えているナナの姿だった。


クドいようだがリョータは幼い頃からナナの涙にとことん弱く、泣かれるとどうしたらいいのか分からなくなる習性にある。



｢ほんっとお前、泣き虫だよな。昔から…｣



その為、もう勘弁してくれよとばかりに対処に困り果てた様子で僅かに視線をずらして苦笑いを浮かべたリョータだったが…


彩子が空気を読み通路から立ち去り、その場に誰も居なくなった事を確認したリョータはそっとナナを腕の中に招き入れると、



｢お前なぁ、あんま可愛いことばっかすんじゃねぇよ…｣



" 油断してっと襲っちまうぞ、この野郎… "



ぎゅっ、と腕の中に閉じ込めたナナに向かって耳元でぽつり、とそんな本音を漏らした。


だが、すぐさま自分の口にしたクサい台詞に小っ恥ずかしさを感じたリョータはナナの肩口にそっと自身の顔を埋めたのだった。


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