Ｓ Ｅ Ｖ Ｅ Ｎ # ３

独自の解釈 ページ25

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「ここじゃアンタも話しずらいでしょーから移動するわよ。ほら、さっさと来なさいリョータ！」


「わ、分かったから…！そう急かさないでよ、アヤちゃん」



ほら、早くしろリョーター！とやけにテンションが高い彩子にお尻の当たりを叩かれ控え室のドアに追いやられてしまったリョータはしぶしぶといった感じでそれに従うことにして、はぁ…と溜め息を落としながら後頭部をガシガシと掻き乱すのだった。


そうして重たい足取りで控え室から通路に出てみれば、案の定そこからはリョータの恐れていた彩子の独壇場が始まって…



「さっき、三井先輩から聞いたわよ。アンタ、例の子と何か揉めてるんだってー？」


「…う゛っ！」
(さっそくピンポイントで俺の痛いとこを…)



開始早々、彩子から強烈なストレートパンチを食らわされたリョータは反射的にゴクッと喉の奥を鳴らした。次はどんな攻撃が来るんだ、と怯えるリョータに対して彩子は更にジャブを打っていく。



「ぶっちゃけ、今どんな状況なのよ？そもそもアンタ、あの子に自分の気持ち伝えたりしてないの？」


「いや、そりゃあ、一応…昨日の夜、俺の気持ちは彼女に伝えたけど…」


「昨日？あー、昨日の夜か…ふーん、やるじゃないのリョータ！この、このー♪ンフフ」



肩を並べて歩いていたリョータの脇腹目掛けてこのこのー♪と楽しそうに肘で突ついてやれば、



「ちょっ、もう勘弁してくれよ…アヤちゃん」
(地獄だ、マジで地獄だぞ)



告白した事への照れ臭さと、彩子からやるじゃない！と褒められた事による謎の気まずさでどうにも居心地が悪いリョータ。


だが、普段からあまり褒められ慣れていないリョータからすれば何だかんだ言いつつも、やはり何処か満更でも無い様子で、へへっ…と後頭部に手を置き笑ったのだった。


そうして、昨夜リョータとナナがこっそり密会した後の一部始終を目撃していた彩子はその事を頭の中でぼんやりと振り返ってみる。



ふむふむ…
じゃあ、タクシーで仲良さげに喋ってたのは
リョータが告白した後ってことになる訳だから…



と、一人腕組みしながらウンウンと頷くとようやく昨夜の状況を何となく把握する。



リョータが告白した後も
二人が仲良さげな雰囲気だったってことは
つまり…



「何よぅ、アンタもほんっと水臭い男ねぇ…告白してあの子と上手く行ったんなら、昨日アタシが聞いた時にすぐそう言えば良かったのに…アンタってば、もぉー！」


「あ、痛って…！ちょ、アヤちゃん、何す…」


「初恋が実って良かったわね、リョータ♡」



リョータの背中目掛けてバシン、と強く叩いた彩子は独自の解釈をしたらしく、彩子の脳内認識はすっかりリョータとナナが丸く収まって付き合った事になってしまった。


当然、それを聞いたリョータは驚いてパチクリと瞬きを繰り返すと、その目を丸くするばかりで…



「…え？」
(いや、まだ何も上手くいってねーけど)


「にしても、リョータ。アンタ付き合ってまだ初日だってのに何さっそく痴話喧嘩なんかしちゃってんのよ」



ったく、先が思いやられるわね…と更に彩子流の独自解釈で、今回の揉め事を"ナナと付き合った末に起こった痴話喧嘩"として謎の認定を受けてしまったリョータだったが…



「…はぁ」
(ヤレヤレ、何をどう解釈したらそうなるんだか…)



けど、また一から説明すんのも何かと面倒くせぇし
説明したらしたで後々、面倒な事になりそうだからなぁ…
もういっそ、そういう事にしとくか…



ニヤニヤしながら悪戯に笑ってリョータを見つめる彩子に、一人苦笑いを浮かべながらすっかりお手上げ状況になってしまったリョータは心の中でこれ以上、余計な事は言わないでおこうと口を噤むのだった。



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