Ｓ Ｅ Ｖ Ｅ Ｎ # ３

盛大なブーメラン ページ23

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「…はぁ、」
(ようやくこれで一勝かよ)



豊玉との一戦だけで精神的にも体力的にも著しく疲労したリョータは控え室に戻るなり、ベンチにドカッと腰を下ろすとうつむき加減になりながら大きく息を吐いた。


試合が終わっても尚身体中から湧き出てくる汗を首にかかったタオルで拭いながら、



分かっちゃ居たけど全国制覇ってのは
やっぱ、そう簡単にはいかねーもんだな…



と、そんな当たり前の事を今になって改めて実感させられてしまったのだった。一通り汗を拭ったリョータはそこでピタリと動きを止めると、今度はボーッと地面を眺める。


ぼんやりとただ地面を見つめるリョータの脳内に今浮かんでいるのは先程逃げるように立ち去ったナナの姿で、



ボソッ…
「んだよ、ちくしょう…」
(何もあんな慌てて逃げなくたって良いじゃねーかよ)



なんかそう思ったら、段々腹立って来た…と、イライラした気持ちをぶつけるように地面に向かって右足をダンッ、と踏み付けるリョータだったが…


どうやら尚も怒りが収まらない様子で、今度は首元にあったタオルに素早く手を掛けるとそれを床にぶん投げた拍子に立ち上がって、



「何が最強山王だ、このクソッタレ…！！」



再びガルル…狂犬と化したリョータは、まるで床に落ちたタオルを山王に見立てたかのように右足で思い切りゲシゲシとそのタオルを踏み倒して罵倒するのだった。



ナナと微妙な空気になっちまったのも
沢北と馬鹿みてーに揉めてんのも
元はと言えば、秋田に山王工業がある所為じゃねーか！



もはやリョータはそんな滅茶苦茶な難癖をつけてしまうほど苛立ちが募っているようで、もどかしすぎるナナとの関係にすっかり翻弄されていた。


そんなリョータの荒れ狂った姿に、周りもおいおい、ついに宮城が壊れたぞ…と若干引き気味な視線を注ぎ恐る恐るながらに様子を窺っていれば、見兼ねた三井がまた損な役回りを買って出る事にして、仕方なく溜め息混じりに止めに入った。



「おい宮城。お前なぁ、和泉と上手くいかねーからって物に当たんなよ…」


「いや、物に当たんなって、三井サン…それアンタが言えた台詞かよ…」



過去に三井から自身の大事にしていたバッシュを蹴り飛ばされたり、バスケットボールに唾を引っ掛けたり…と、これまでに三井が物に当たる瞬間を何度も目にしてきたリョータからすれば当然の言い分に、



「…ぐっ！」
(コイツ、ぐうの音も出ねー事を…)



何も言い返せなくなった三井がプルプルと怒りに震えながら縮こまっていく様を傍観していた周りの湘北メンバーも「おお、確かに…」とリョータの反論に賛同すると深く頷いたのだった。




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