Ｓ Ｅ Ｖ Ｅ Ｎ # ３

孤軍奮闘 ページ3

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心と身体に文字通り、ガツンと強烈な一撃を食らわされた沢北はすっかりナナの言動に圧倒されてしまい、しばらくその場で唖然として、ポカンと口を開けたまま動けなかった。


少しして、ナナの言葉を脳内で反芻させながらじっくりとその言葉を意味を理解した沢北はふっ、と小さく息を吐くように笑うと、



「おう、分かった。もう絶対言わねぇよ」


『…っく、絶対、だからね、っぐす、うぅ』


「いや、分かったから、そんな泣くなって…目腫れるから！」



目の前でボロボロと涙を流すナナの姿を目にしてすっかり困り果ててしまった沢北は、これバレたら、後で確実に深津さんや河田さんにボコボコにされるやつだ。と即座に悟るなり青ざめた表情を浮かべた。


とりあえず、少しでも目が腫れないようにとナナを気遣う沢北は、ボロボロとナナの頬を伝っていく涙を指の腹で何度も拭う事に専念するしかなかったのだった。




『もう、リョーちゃんはリョーちゃん、栄治は栄治でしょ！』


『栄治には栄治にしかない魅力がちゃんとあるんだから、変に卑屈になったりしないでそのままで居て』


『私が知ってる栄治の長所を自分で消そうとしないで！』



「…………。」
(俺にしかない魅力、か…)



一度は無くしかけていたナナと自身を繋ぐ存在意義を再び取り戻せたのはナナの口から直接そんな言葉が聞けたからで＿＿


更に言えば、今まで自分だけの一方通行だと思っていたナナに対する特別な感情。その形や大きさは違えども、ナナなりに自分の事を特別だと思っていてくれた事が何より沢北を喜ばせたのだ。


もしも、二人の特別な感情に名前を付けるとするならば沢北の特別な感情は愛情で、ナナは友情とまだそこに違いはあるものの、


ボソッ…
「勝負に絶対は無い」
(まぁ、焦りは禁物ってことで)



友情から愛情に変化する可能性がナナの中に僅か1ミリでも残されているのなら、ひとまず今日のところは現状を甘んじて受け入れてやるか。


そんな結論に達した沢北は、此処から更に巻き返しを図るべく孤軍奮闘する事を胸に固く誓った。



『ん？今、栄治何か言った？』


「いや？別に何も？ナナの空耳だろ」


『え、嘘…なんか耳おかしくなったのかな？』


「ははっ！んな訳ねーだろ」



ナナからの問いかけをしれっとすっとぼけて見事交わした沢北。空耳と言われて困惑するナナの姿を横目に笑いながら、そっとその頭に手を乗せると、ぽんと軽くそこに突っ込みを入れたのだった。



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