T R I G G E R .. #2

Eau douce 7 ページ23

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『んー、でもさぁ、やっぱ一人じゃ危ないでしょ』


『ああ、そうだ、なぁ、いつきー』


「…っ、何ですか｣



北人さんはこう見えても九州男児で
男らしい考え方をもってるから
きっとナナを一人で帰したりする筈が無い。


そう予想した俺の勘は
どうやら外れていなかったみたいで…



『悪いんだけどさぁ…』


『途中までナナの事、送ってくれない？』


『また今度、お礼はちゃんとするから』


「ああ、俺は別に良いですけど…｣



偶然にも舞い込んできたチャンスに
内心、口元が緩みそうになるのを
ぐっと堪えて冷たい言い方に徹した。


すると、ナナは
申し訳無さそうな表情をしながらも
また何か俺に報告したい事でもあるのか、



『えっ、本当に良い、の？』


『だって樹君、確か、方向逆だよね…？』



なんて、口ではそう言ってるくせに
ナナの目は



｢お願い、また話聞いて欲しいの！｣



と、分かりやすい程に強く訴えてくる。
だから、仕方ない素振りをして



「良いよ、どうせ今日は夜、暇だったんで…｣


「今日だけっすよ｣



なんて、馬鹿みたいに
嬉しい気持ちをひた隠して
がしがし、と頭を掻きながら
面倒臭い素振りで溜め息混じりに
気怠い返事をしたりして、



「そんな事よりさ…｣


「さっき、また、樹“君”って言いましたよね？｣


「しかも、密かに二回(・・)も…｣


「何か、俺に恨みでもあるんですか？｣



じとーっとした表情でナナに対して
冷たい視線を向ければ
彼女はあからさまに青ざめて戸惑いだすから
面白くて仕方ない。



『え、ち、違うよ？』


『本当に、本当に、わざとじゃないんだってば！』



とか、慌てて身ぶり手振りで否定する
いつも通りのナナの態度が
今日は俺の眼にやけに可愛く映って、
堪らずに、ふっ、と息を吐く振りをして
笑みを浮かべながら
さりげなく自分の心にこう言い聞かせた…



例え、ナナに他に恋人が居ても
俺が彼女を好きでいる事は罪になる訳じゃない


だったら、陸さんの様に不器用でも
境界線を保って彼女の側にいよう、と＿＿








T R IGG E R .



#Case : Itsuki Fujiwara.



Story 02 : Eau douce.









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