T R I G G E R .. #2

Eau douce ページ17

.





俺自身が思い描く、
《藤原 樹》と、いう確かな人物像に
今までは何の違和感を持った事も無かった。


まぁ、普通の思考なら
それが俺自身なんだから
それが当たり前の発想で…


だけど、今の俺は体の一部が
別の意思を持っているみたいに
コントロールを失ってしまっている。


まるで違和感だらけの自分に
もどかしくも鈍い痛みが胸を燻っていた。



「……っ、｣
(最悪だな)



他にも沢山魅力的な女性は溢れているのに、
どうして俺は選りに選って
ナナのような、あんな面倒臭い女性を
わざわざ好きになってしまったんだろう。


これは俺の見解でしかないけど、
人は幅広く多くの選択肢を用意されると迷い
目移りして、答えを出せなくなる
そんな優柔不断な生き物で…



そして＿＿



『あの場所は危険だから、』


『間違っても絶対に行っては行けない』



そう誰かに言われると、
たちまちその場所が魅惑的に見える
そんな錯覚に陥って
一目で良いからその景色を見ようと
多少のリスクを背負ってでも
行ってみたくなるのが人間の性なんだと思う。



現に俺がナナに惚れてしまった理由
まさにそれが、この理論に当てはまる訳で…



と、同時に
これだけ客観的に考えられる理性が
まだ保てている間は大丈夫なんじゃないか、と
馬鹿みたいに自分自身に言い聞かせていた。







T R IGG E R .



#Case : Itsuki Fujiwara.



Story 02 : Eau douce.









.

Eau douce 2→←Third party. 5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す