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だから彼が自分の誤解を謝ってきたことは私にとって予想外の出来事で、ただ純粋に驚いた。
――この間は、ごめん。
すごく、腰の低そうな態度で弱々しく謝る彼。
最初は何に謝られてるか分からなかった。それくらい、自分を誤解されることなんてどうでもよかった。
もしかしたら、心のどこかに『どうでもよくない』と思っている自分もいたのかもしれないけれど、諦めるという行為はそんな自分の感情も消し去ることができたんだ。
それでもこんな風に誠心誠意人に謝られたことのなかった私は、どうすればいいのか分からなくなったし、
だから、ぎこちない笑みを浮かべていたと思う。
大倉くんは、容姿だけじゃなくて中身も完璧なひとなんだって。感心したりもした。
たくさんいる同期の中のひとり、容姿端麗で性格もいい、欠陥などとは程遠いひと。
あの時、彼はまだ私の中で、たったそれだけの存在だった。
それが、変わったのは多分、あの夜だ。
――もう十年くらい経つのに、今でもそん時のことずーっと後悔しとんねん。
突然、二度ほどしか話したことのない私に、好きだった幼馴染の話をし始めて、
素直に「後悔してる」と口にした大倉くんは、
とても情けなくて頼りなくて、でも、痛々しいほどまっすぐで――
どうしようもなく人間らしかった。
『完璧なひと』だと思っていた彼が過去にいつまでも縛られて燻っていることに私は素直に動揺した。
そして私は彼が、とても羨ましかった。
人間らしさなんて自分自身に感じたことなんて今まで一度もなかったから。
あんな風に素直に後悔を言葉にできる彼に、切なそうな表情をできる彼に、嫉妬した。
あの時の私は、ただそんな感情に圧倒されただけで気づいていなかったけれど、
ほんのわずかに彼に惹かれ始めていたんだと思う。
それは、何かとてもやさしい力に引き寄せられるように。
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蒼 夢見子(プロフ) - 幸さん» 幸様、とっても素敵な感想いただいてしまい、胸がいっぱいです…。おこがましいですが、読んでくださる方がすこしでも何か思ってくださるとすごくうれしい気持ちになります。こちらこそ、読んでくださり、もったいないほどの温かいコメントをありがとうございます…！ (2019年10月31日 16時) (
レス) id: e4c7cf5b6b (このIDを非表示/違反報告)
幸 - とても、引き込まれるお話でした。見ることができて、よかった。vocabularyも豊富で、表現が繊細で、読者を震わせることができる人だと思います。これから、全て作品見ます。ずっと、応援してます。ありがとう。 (2019年10月29日 0時) (レス) id: 295a9fdbac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年9月12日 23時
