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11月半ばになった。
秋ってほんまに一瞬やなってここ数年毎年思ってる自分は歳取った気がしてなんか嫌や。
でもやっぱり秋って、秋やなって思って深呼吸した次の瞬間にはもう終わってるんとちゃうかって思うくらい短い。
季節はとっくに冬やった。
寒がりの俺はとっくにコートもマフラーも使ってる。
暑い夏よりは冬の方がまだ好きやけど、それでも寒い朝の目覚めの悪さは最悪や。
瞼に重石を乗せられたみたいに一向に目が開かへんまままるで特効薬を摂るみたいにあったかいコーヒーを飲んで、
シャワーを浴びて適当に飯を食って出社。
最近は仕事が終わってからと休日、ジムに通ってる。
前より自炊もこまめにするようになったし、健康的になったからか今年は去年までは毎年起こってた季節の変わり目の頭痛に悩まされずに済んだ。
俺も俺なりに必死やった。
なんとか元に戻ろうって。ニュートラルの状態に戻そうって。
ただフラれただけ。俺はたまたまあいつ以来ちゃんと恋愛もしてこなかったし、失恋への免疫がないだけで、フラれるなんて全然珍しいことやない。
もう少しすればきっとなんも思わんようになってる。
そんなことを何度も頭の中で復唱したりした。時にはランニングマシーンで走りながら。時にはカレーを煮込みながら。
アラサーの男が失恋ごときでこんなに必死になってるのって相当気色悪い気もするけど、
正直それくらい参ってたんやからしゃあない。
いつしか彼女にもらったりんごジュースは冷蔵庫の最奥に転がったままやった。
改札から出て、あくびをしながら階段を登り、眠たそうなサラリーマンに紛れながら信号を待つ。
朝の日差しは清々しいけど、冷たい風が吹き付けて肩にぎゅっと力を入れながら何気なく視線を左に動かすと一瞬心臓がひやりとする。
見覚えのある後ろ姿が右斜め前におったから。
信号が青に変わったら気づかんかったふりして少し距離を保って歩こうか少し悩んだけど、
そんなん敗北を認めたみたいで(何に対する敗北かは分からへんけど)大人の男のすることやないって思ったから丁度信号が変わって歩き出したタイミングで、
「おはよ。」
とほとんど俺の隣にならんだ彼女に柔らかに挨拶をした。
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蒼 夢見子(プロフ) - 幸さん» 幸様、とっても素敵な感想いただいてしまい、胸がいっぱいです…。おこがましいですが、読んでくださる方がすこしでも何か思ってくださるとすごくうれしい気持ちになります。こちらこそ、読んでくださり、もったいないほどの温かいコメントをありがとうございます…! (2019年10月31日 16時) (レス) id: e4c7cf5b6b (このIDを非表示/違反報告)
幸 - とても、引き込まれるお話でした。見ることができて、よかった。vocabularyも豊富で、表現が繊細で、読者を震わせることができる人だと思います。これから、全て作品見ます。ずっと、応援してます。ありがとう。 (2019年10月29日 0時) (レス) id: 295a9fdbac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年9月12日 23時