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それは、あまりにも、衝撃的で苦しくて悔しくて、想像しようにも途方に暮れそうな話やった。
常に『なんとなく』で生きてきた俺には、どんなに頭の中で想像したって現実とまるで離れている、ドラマの中の話のように思ってしまうほど。
俺が何年間もの間ずっと囚われていた呪いなんて、笑ってしまうほどちっぽけで、俺は恥ずかしくなった。
それと同時に、今までの彼女の言動に納得せざるを得なくなってしまった。
彼女はたぶん、打ち明けていくうちに自分の感情を上手く落ち着かせようとしたんやと思う。
その口調はまるで、最近読んだ小説の内容を簡潔に説明するように淡々としていたし、
さっきまで瞳の中に残っていた涙は話し終える頃にはとっくになくなっていた。
俺はそれが、どうしようもなく悔しかった。
俺はこんなにもずっと感情を揺さぶられて、訳分からんようになってるのに、もう既に終わったことのように話す彼女が腹立たしかったし、やりきれなかった。
「…そういうことだから。」
そんなそっけない台詞で全てをまとめようとする彼女。
思えば、出会った頃からそうやった。
彼女にはいつもどこか、諦めていた。
それが彼女の生い立ちと関係があると分かった今、どうしようもないことであるのは分かっているけど、
彼女が好きで諦めてるわけやないって分かってはいるけど、
俺は、無理や。
そんなこと聞いたからって諦められへん。
胸がじわじわと握りつぶされるみたいに苦しくなってくる。
「俺のこと、ほんまはどう思ってるん…？」
感情が高ぶって、震えそうになる声を必死で抑えた。なるべく、冷静を保てるように何度も心の中で自分を宥める。
「………え？」
山田さんはうっすら眉間に皺を寄せた。
「ちゃんと、教えて。」
「………それは、無理だよ。」
無の表情を貫いてた彼女の顔が大きく、歪む。
声が小刻みに震えてた。
「そんなん、ずるい。…山田さんはずるいわ。」
「俺はもう、とっくに好きやのに。こんなけ好きにさしといて、告白もさせてくれへんし、どう思ってんのかも教えてくれへんの…？」
抑えることのできない感情に声が少しだけ大きくなった俺の胸を彼女はそっと両手で押した。
「お願いだから―…」
「もう、諦めて。」
その時、彼女の右目から静かに、一筋の涙が滑り落ちた。
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蒼 夢見子(プロフ) - 幸さん» 幸様、とっても素敵な感想いただいてしまい、胸がいっぱいです…。おこがましいですが、読んでくださる方がすこしでも何か思ってくださるとすごくうれしい気持ちになります。こちらこそ、読んでくださり、もったいないほどの温かいコメントをありがとうございます…！ (2019年10月31日 16時) (
レス) id: e4c7cf5b6b (このIDを非表示/違反報告)
幸 - とても、引き込まれるお話でした。見ることができて、よかった。vocabularyも豊富で、表現が繊細で、読者を震わせることができる人だと思います。これから、全て作品見ます。ずっと、応援してます。ありがとう。 (2019年10月29日 0時) (レス) id: 295a9fdbac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年9月12日 23時
