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一月十一日は雨やった。
朝からしとしとと寒々しく雨が降っていて、空はどんよりと低く重たくて、
今週は月曜からずっとくもりだったり雨だったりしたから部長も「新年早々すっきりしねえなあ」と窓の外を見ながら呟いてた。
イヤホンから聞こえてくる洋楽。
つり革につかまりながらどこを見るわけでもなく、疲れた脳を休めるようにぼんやりとただ電車に揺られていると最寄駅はあっという間やった。
雨は寒いし、湿っぽいし、歩きづらいし好きやないけど今日は紛れもなく金曜日やから、
明日が休日やということにほっとして慎重に家路を辿る。マフラーに顔を埋めながら。
彼女とは、年が明けてから会社で一度だけ喋った。
それもこの間と同じ、「この間迷惑かけてごめん」ってことだけで。
俺は段々とあの夜あったことは、彼女が泣いて俺の名前を呼んだのは俺の思い違いで、気のせいやったんやないかって思い始めてた。
もちろん、気のせいとちゃうと思うけど。
でもそのことで勝手にあれこれ考えたって疲れるだけやし、何か新しい真実を知ったところで俺が彼女にフラれたのは確かやった。
今思えば、あのまま何も知らずにいたほうがよかったのかもしれない。
彼女が俺に言わなかったこと。不可解やった彼女のさまざまな言動のワケ。
それでも俺が平均寿命まで生きるとするなら、その呪いだって絶対に薄れていくものやから。
そうなること彼女も望んでいたから。
家に着くとコートもマフラーも身につけたまま、まず床暖と暖房の電源を入れる。
コーヒーポットに残っていたコーヒーをマグカップに入れて電子レンジの中に閉じ込めた。
あたたまったコーヒーを飲みながら、俺はようやくマフラーを外しコートを脱ぐ。ポケットからイヤホンが無造作に巻かれたミュージックプレイヤーを出して、テーブルの上に置く。
そうして当たり前のようにもう片方のポケットに手を突っ込んでから、
「あ」
と思わず小さく声を漏らしてしまった。
…携帯、忘れてきてもうた。
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蒼 夢見子(プロフ) - 幸さん» 幸様、とっても素敵な感想いただいてしまい、胸がいっぱいです…。おこがましいですが、読んでくださる方がすこしでも何か思ってくださるとすごくうれしい気持ちになります。こちらこそ、読んでくださり、もったいないほどの温かいコメントをありがとうございます…！ (2019年10月31日 16時) (
レス) id: e4c7cf5b6b (このIDを非表示/違反報告)
幸 - とても、引き込まれるお話でした。見ることができて、よかった。vocabularyも豊富で、表現が繊細で、読者を震わせることができる人だと思います。これから、全て作品見ます。ずっと、応援してます。ありがとう。 (2019年10月29日 0時) (レス) id: 295a9fdbac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年9月12日 23時
