。 ページ41
。
「…嘘やん。」
想像だにしない返答に俺はただぽかんとした顔でそう言うしかなかった。
「あの時は、知らないふりするのが一番お互いが傷つかないって思ってたの。」
周りの喧噪が遠く聞こえる。
「でも、忠義が上京していなくなって、そうじゃなかったって気づいて。
私はただ自分を守りたかっただけだったんだよね。忠義にとってはそれが一番酷だったこと、その時になって初めて分かった。」
そして、もう一度俺を見上げると「ごめんね」と、眉毛を下げてくしゃりと笑った。
「それがどことなくずっとひっかかってて、だから、今日忠義がきてくれてちゃんと言えてよかった。ありがとう。」
恥ずかしさとか、優しさとか、あたたかさとか、その他にももっと言葉に表せない感情でいっぱいで、なんだかもう自分がどんな顔をしているのかも分からへん。
「俺も、」
出だしが少し掠れる声。
「ずっと後悔しててん。ちゃんと言わんと逃げてたことも、最後まで言われへんかったことも。」
今日、ここに来るまでは不安やった。
自分がどんな気持ちになるのか想像つかんかったから。
「幼かったよね、私達。」
「せやな。」
「忠義、二次会は？」
「あー明日仕事あるからもうすぐ帰るわ。」
「そっか。」
「あ、ほら。旦那、お前のこと探しとるで。」
「ほんとだ。じゃあ。気をつけて帰ってね。」
「ん。今日はおめでとうな。」
「ありがとう。」
呪われてたんは、俺だけやなかった。
幸せは、他人の犠牲の上に成り立ってるわけやなかった。
外の風はすっかり涼しくて、開放的で、静かな秋の夜に俺は腕をめいっぱい広げてみる。
やっと呪いから解放された。そう思った。
腕を広げたまま叫びたくなった。
長い呪縛やったな、って。
呆れるほどに情けなくてしょーもなかった過去の自分に大声で笑い出しそうにもなるし、泣いてしまいそうにもなる。
そして俺は。
彼女に会いたくなった。
会いたくて仕方なくなった。
今の自分は無敵で、なんでもできるような気がして。
お気に入りのビールのロング缶を買うと新大阪からのぞみ64号に飛び乗った。
。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 312人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、初めまして。有難いお言葉に胸が熱くなりました…後先考えずにがむしゃらに書いてしまった荒すぎる出来の中でふたりの互いに想い合う気持ちは一番慎重に書いたのでそう言っていただけてとても嬉しいです！こちらこそ読んでくださりありがとうございました^^ (2018年11月10日 23時) (
レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - はじめまして。あまりにも続きが気になって一気に読ませて頂きました。描写はもちろん、ヒロインと大倉くんのお互いを想う切実さが綺麗で、思わず息が詰まりました。とっても素敵なお話をありがとうございました。 (2018年11月9日 15時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年8月7日 18時
