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ドアを開けて出てきた彼女は顔色も血色が良くなってて、少し鼻声やけど淡々とした喋り方もしゃんと伸びた背筋も戻ってきていた。松葉杖は相変わらず脇に挟んでるけど。
それでもこの間と同じノーメイクの幼い顔とゆるく纏められた髪にやっぱり俺の心臓はどくんと小さく波打つ。
「今コーヒー淹れたところなんだけど。飲む？」
「ええの？」
「おつかいだけさせて帰らせるなんて申し訳ないし。良かったら。」
「じゃあ。」
俺は「病み上がりなんやし、気い使わんくてええのに。」なんて言いながらも嬉々として彼女の家に上がるわけで。
最初は届けるついでに顔を見れるだけでいいと思ってたのに。
自分勝手にどんどん貪欲になっていく。
三度目の山田さんの部屋はコーヒーの香ばしい匂いが漂っていて、
視界に入った食卓にはまたノートパソコンが開いて置いてあった。
「アイスとホット、どっちがいい？カフェオレにもできるけど。」
「あ、自分でやるからいいよ。山田さんは座っとき。山田さんは？」
「ごめん。じゃあ、私はアイスで。氷は冷凍庫に作ってあって、グラスとカップはその上の戸棚の適当に使っていいよ。」
「りょーかい。」
全体的に物の少ないキッチンにあるコーヒーメーカーはひときわ存在感があって、コーヒーの入ったポットにゆっくりと手を伸ばして取ると、
「そのコーヒーメーカー、」
と背後から声がして、ポットを持ち上げながら振り向く。
「東京来てからバイトでお金貯めて初めて買ったやつなの。」
「へえ。ええな、コレ。」
「でしょ。もう7年使ってる。」
「めっちゃ物持ちええやん。」
誇らしそうに頷く彼女は無邪気で。
7年も大切に使われとるこのコーヒーメーカーは幸せもんやな、なんて思いながら氷を入れた二つのグラスにコーヒーを注いだ。
まだ温かいコーヒーを上からかけられた氷はカチカチと音を立てる。
「山田さんは、大学から上京？」
「うん。高校生までは長野。」
「長野なんや。行ったことないかも。」
片方の手に持ったグラスを山田さんの前に置くと向かい側の椅子を引いて座った。
「住んでたとこは信じられないくらい田舎だけど。」
「お盆は帰ったりしたん？」
「うん、一応。…あ、そうだ。お金まだだったよね。」
コーヒーのグラスを置くと机の上にあった財布に手を伸ばす山田さん。
俺はグラスを傾けながら『信じられないくらいの田舎』を頭の中で想像した。
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蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、初めまして。有難いお言葉に胸が熱くなりました…後先考えずにがむしゃらに書いてしまった荒すぎる出来の中でふたりの互いに想い合う気持ちは一番慎重に書いたのでそう言っていただけてとても嬉しいです！こちらこそ読んでくださりありがとうございました^^ (2018年11月10日 23時) (
レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - はじめまして。あまりにも続きが気になって一気に読ませて頂きました。描写はもちろん、ヒロインと大倉くんのお互いを想う切実さが綺麗で、思わず息が詰まりました。とっても素敵なお話をありがとうございました。 (2018年11月9日 15時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年8月7日 18時
