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俺にはお金だけ受け取って買った物渡して帰る気はさらさらなくて、
「お金はええよ。お見舞い代ってことで。」
お札を差し出す彼女の手を押し戻す。
こんな季節やのに、触れた指先が驚くほど冷たかった。
「え…でも。」
「大丈夫やから。」
いつもの淡々と喋る口調も今日は力無いし、声も小さい。
風邪を引くだけやって充分しんどいのに、その上足も松葉杖つかな歩かれへんし、弱ってるのは一目瞭然で。
「あのさ…お節介かもしらんけど、折角来たし、俺にできることない？飯作るとか、お皿洗うとか、なんでもするけど。」
思い上がりかもしれへん。でも、俺に買い出しを頼んでくれたのは俺を当てにしてくれたってことだと思いたくて、
彼女の目をじっと見ると彼女は少しだけ視線を揺らすと、首を小さく横に振る。
「気持ちは嬉しいけど…移ったら大変だし、」
「移っても平気やから。あるんやったら、遠慮せんとって。」
前回に引き続き、強引やなと自分でも思うけど、多少強引やないときっと彼女は素直に頼ってくれないと思った。
俺を見上げる山田さんは、数秒黙り込んだ後、「じゃあ」と口を開く。
「…その、買ってきてくれたご飯だけ、チンして欲しい。」
控えめすぎる頼みに俺は表情を緩ませ頷いた。
…不器用やな、と心の中で小さく笑う。
この人は多分、頑固とかそういう以前に人に物を頼みなれてへんだけなんやろうなって。人を頼ったり、甘えたり、そういうのが下手くそなんや。
彼女が言うてた『欠陥』はこの不器用さのことなんやろうか。だとしたらそれこそ俺のダメなところと同じで、俺は彼女の不器用さを欠陥だとは思われへんけど。
「お邪魔します。」
「散らかってるけど…、」
「体調悪い時まで家ん中綺麗な人なんておれへんよ。」
散らかってる、なんて言ってこの間来た時より多少物が多いくらいで全然気にならへんかった。
食卓の上には開いたままのパソコンが置いてあって、仕事をしてた形跡がある。
「とりあえず寝とき。しんどいやろ。今飲みもんとか持ってく。」
「うん…ごめん。」
明らかに立ってるのもしんどそうな彼女は小さく頷くと顔を歪め、部屋の一番奥にあるソファベッドに溶けるように腰をかけた。
この間はじろじろ見ても悪いと思ってあんまり見いひんかったけど、山田さんの部屋は広めのワンルームに必要最低限の物だけが収められた、少しだけ寂しい部屋にも見えた。
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蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、初めまして。有難いお言葉に胸が熱くなりました…後先考えずにがむしゃらに書いてしまった荒すぎる出来の中でふたりの互いに想い合う気持ちは一番慎重に書いたのでそう言っていただけてとても嬉しいです！こちらこそ読んでくださりありがとうございました^^ (2018年11月10日 23時) (
レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - はじめまして。あまりにも続きが気になって一気に読ませて頂きました。描写はもちろん、ヒロインと大倉くんのお互いを想う切実さが綺麗で、思わず息が詰まりました。とっても素敵なお話をありがとうございました。 (2018年11月9日 15時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年8月7日 18時
