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地下鉄の駅、A5出口登ってから徒歩5分。ガラス張りのオフィスビルの自動ドアを潜る。
エレベーターに乗り、8階へ。
部署のオフィスに入ってすぐの壁に設置されているホワイトボード。自分の名前がついたマグネットを『社内』の枠に貼り付けた。
ここに勤め始めてもう五年ほど経つわけで、息を吸うのと同じように何も考えず、そこまでの行動を終える。
「おおくらぁ。」
背後からまるで女子高生が友達の名前を呼ぶようにして俺を呼ぶ声がして、振り返ると、ヤスがおった。
今日も、ネクタイが派手や。
「おはよ。」
「おはようさんー。あ、俺のも貼ってー！」
「ん。」
俺は『安田』と書かれたマグネットを同じく『社内』の枠の中に貼り付けた。
「大倉今日商談？」
「おん。この間言うてた製紙会社と。」
「そぉか。一回戻ってくる？」
「多分な。近くやし。」
「せやったら夜、飯行けへん？」
ヤスは俺を見上げて首を傾げた。アラサーの男やなのに、仕草はやっぱり女子高生や。
そしてたまに、彼をかわいい男やと思ってしまう俺もどうかしてるんやろうか。
「ええよ別に。」
「ほな決まりなぁ。」
ヤスといつも通りの会話を交わし、デスクにつくと仕事が始まる。
ヤス、安田章大は同期で、しかも出身も関西で同じやから何かと気が合う。入社当時からずっと同じ部署で、昼飯もよう一緒に食べに行くし、時々仲良すぎて気持ち悪いと思うくらい。
いつものごとくパソコンの前でしばらく作業をしてから、必要書類やらなんやらを鞄に入れて取引先へ赴くために席を立った。
「お疲れ様です。」
受付嬢二人が俺を見てにこにこと頭を下げてきたから、俺も軽く頭を下げて外に出る。
東京は梅雨の晴れ間で、ビルとビルの間から眩しい太陽が顔を出していた。
夏はあんまり好きじゃない。
そもそも暑いのが苦手やし、俺はヤスと違ってアウトドアな夏の行事にも興味がないし、休みが10日あれば10日家ん中でダラダラするタイプやから。
『タツはインドアすぎ。もっとどっか連れてってよ。』
何年か前に付き合うてた元カノにそう不満を言われたこともあった。
どっか連れてって欲しいんやったら、別の男と付き合えばええのに。なんて思ってもうて、結局彼女とは一年も続かずに別れたっけ。
思えば今まで言い寄られたら付き合ってみたりもしてきたけど上手くいった試しがない。
それも過去の呪縛のせいにしてしまう自分も嫌やった。
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蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、初めまして。有難いお言葉に胸が熱くなりました…後先考えずにがむしゃらに書いてしまった荒すぎる出来の中でふたりの互いに想い合う気持ちは一番慎重に書いたのでそう言っていただけてとても嬉しいです！こちらこそ読んでくださりありがとうございました^^ (2018年11月10日 23時) (
レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - はじめまして。あまりにも続きが気になって一気に読ませて頂きました。描写はもちろん、ヒロインと大倉くんのお互いを想う切実さが綺麗で、思わず息が詰まりました。とっても素敵なお話をありがとうございました。 (2018年11月9日 15時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年8月7日 18時
