【白猫プロジェクト】髪、目、身体、そして心

三十四話 ページ41

A「…おいし〜」


私は今現在、パンを食べてる。


なぜか、ものすごくおいしい。


レイン「当たり前だろ。丸一日食ってねぇんだぞ」


レインは牢屋の鉄の棒のところに、立って寄り掛かってる。


背を向けているわけじゃなくて、こっち見てるけど。


A「あー、そうだったな」


プラス、さらわれる前は、晩ご飯も食べてなかった。


そりゃ何でもおいしいよね。


A「…おいしいけど、味がないんだよね」


そして、なんかすごい大きいパンだし。


そろそろ飽きてきたよ。


レイン「贅沢言うんじゃねぇよ」


A「それにこのパンだけって、絶対足りないんだけど。これだけだと、餓死しちゃうよー？」


他のも食べたい。


レイン「…別に、人間はそんな簡単に死なねぇだろ」


ウザッたいなって言うような顔を向けて言ってきた。


人間ねぇ…。


A「…私人間じゃないし」


レイン「はぁ？」


そう。


違うよ。


A「〈化物〉だし」


レイン「……」


レインは無表情になった。


A「他の人間と違って、目の色も、髪の色も、違うし。周りと違って、風の魔法を、使えるし」


周りの人間と、何もかもが違う。


違ったの。


周りの村人たちと。


だから私は……。


レイン「……何言ってんだお前。そんなの普通だろ」


A「！」


へ？


…普通？


普通…。


いや、違う。


A「普通なわけ、ないじゃない。だって色がおかしいんだよ？周りと全く違う。親だって、髪も目も色が普通だった。その普通の二人から何故か異様な私が生まれてきて。それで…〈化物〉って」


私は普通じゃないんだ。


おかしいんだ。私が。


レイン「……」


A「最初から、こんな髪や目をしてなかったら、村のみんなだって殴ったり、罵ったり、陰口を言ったりしなかった。絶対。ただの普通の村人だったでしょうね」


石を投げられることも、

怪我をしたら私のせいにされるのも、

魔物の凶暴化を私のせいにされるのも、


全部、なかっただろうな。


…なんて。


何百回思ったことか。


でも、もういいんだ。


変わらない方が、幸せなことだって


……気づいたし、ね。


変わってしまえば、何かが壊れてしまうかもしれない。


"あの時"みたいに…。


レインはまだ無表情で私を見ている。


そしてしばらくして、やっと口を開いた。


レイン「…お前、バカか？」

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