氷姫 弍【冨岡義勇】

捌拾弍話 ページ34

考えれば分かる。


鬼と人間では人間が絶対に弱い事を＿＿＿



腕や足、それらを切断しても鬼はまた直ぐに生えて回復する。…どんなに体力が削られてもまた直ぐに回復する……



人間は斬られた腕や足は元には戻らないし、体力にも限界がある。



全集中の呼吸を使ったって体力はどんどん消耗していく＿＿＿もう私は体力が底に尽きそうだ。





……姉さん、ごめん。約束果たせないで私姉さんの所に行く事になるかも＿＿＿






【……A……】




私の目の前には死んだ筈の姉さんが居た。
…何これ、夢？それとも私死んだ………？



【諦めないで＿＿頑張って＿＿】




＿＿＿無理だよ、頑張ってもアイツには勝てない。姉さんだって勝てなかったんだから＿＿＿



【……今のAになら出来る】




【…冨岡君に沢山、教わったんでしょう？】




【頑張って＿＿Aになら出来る】







＿＿＿何故だろう、無意識にも立ち上がっていた。




「まだやるの？もう無理だよ…諦めちゃいなよ〜」



諦めたい、諦めたいけど諦める訳にはいかない。約束を果たさないと私は死ねない。



勝てば生きる。


負ければ死ぬ。


戦わなければ……勝てない。





3年間、辛い鍛練をしてきた。それを今発揮すべきだ。師範にも秘密でしてきた事がある。
……出来るか分からない。



でもやってみる価値はある＿＿＿＿





『水の呼吸 拾壱ノ型 波の綾』




これは私だけの型。師範に秘密で開発していた
…綾とは波が押し寄せてくる姿を表した言葉。
この型は波が押し寄せてくる様な…攻撃だ。




＿＿＿いける、いけ、頸を斬れ＿＿＿＿





もう、空は暗くは無く明るくなっていた。

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